一方のサントリー食品は今回、一部商品を除き、大型・小型ペットボトルともに希望小売価格ベースで20円値上げする。それに追随したアサヒ飲料は大型ペットボトルにおいて、最大で同30円の値上げを発表した。
メーカーが小売店に支払うリベート(販売奨励金)の多寡などに応じて、実際の店頭での値上がり幅は変動する可能性もある。ただ、コカ・コーラBJHが値上げを発表した後の数カ月の間に原料高が一段と進んだこともあり、サントリー食品やアサヒ飲料のほうが強気の値上げ幅を打ち出した格好だ。
また、出荷価格の値上げの発表にとどめたコカ・コーラBJHに対し、サントリー食品などは希望小売価格ベースと、店頭価格への転嫁に向けて一歩踏み込んだ形で値上げを発表している。商品で見ても、コカ・コーラBJHはミネラルウォーターを値上げから除外している一方、サントリー食品は「サントリー 天然水」を対象に含むなどの違いが見られる。
飲料業界はお茶1つとっても各メーカーの商品が多数あり、「社員でも味の違いはわからない」(前出の飲料メーカー社員)と言われるほど差別化が難しい。特定のカテゴリーで1社が安売りすると、消費者はその商品に流れる傾向がある。
現状のようにメーカー間での足並みがそろわないと、相対的に値上げ幅の小さい企業がシェアを拡大させて優勝劣敗が分かれてくる可能性がある。そうした状況になれば、販売数量で打撃を受けたメーカーが小売店へのリベートを増やすなどして実質値下げに踏み切り、再び価格競争に陥る展開も危ぶまれる。
業界全体で値上げに失敗した過去
実際、飲料業界では一度値上げを行ったものの、その効果が薄れた過去がある。
2019年に物流費の高騰を受け、飲料メーカー各社は大型ペットボトルで希望小売価格の引き上げを実施した。しかし、小売店からの圧力があったことに加え、メーカー側も販売数量拡大を狙った安売りを仕掛けた結果、「一度は上がった店頭価格が、その後また下がってしまった」(野村證券の藤原悟史アナリスト)。
原料高がいつまで続くか見通せない状況下、野村證券の藤原アナリストは「今回の値上げをきっかけに、業界全体でシェア争いから脱却できるかどうかがカギ」と見る。今後の情勢を占ううえで焦点となるのは、今年後半に小型ペットボトルの値上げを検討すると明言しているコカ・コーラBJHが、大型ペットボトルにおいても再び値上げに踏み切るかどうかだろう。
ただ、コカ・コーラBJHの立場からすれば、再度の値上げに踏み切りづらい事情がある。
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