安売り合戦で消耗してきた飲料業界に、空前の値上げラッシュが巻き起こっている。
5月16日、国内飲料2位のサントリー食品インターナショナルは一部製品を対象に、10月1日から希望小売価格を6~20%引き上げると発表した。大型ペットボトルでは2019年4月以来だが、小型ペットボトルでは1998年3月以来と、実に約24年ぶりの値上げとなる。
日本の飲料業界はメーカー間での価格競争が激しく、小売店との交渉などの過程でシェア争いが熾烈化してきた。その結果、メーカーが目安として設定する希望小売価格300円台の大型ペットボトルが、100円台で販売されるといった安売りが常態化。海外と比べ機動的な値上げも長らく行われておらず、市場関係者からは「健全な業界ではない」と批判されてきた。
競合も続々とサントリー食品に追随
しかし、急激な原料高が襲っている今回はさすがに様相が異なるようだ。サントリー食品の値上げ表明以降、5月25日にアサヒ飲料が、5月30日にはキリンビバレッジと伊藤園が、せきを切ったように値上げを発表した。
「もはや上がっていない原材料を探すほうが難しい事態に陥っている」。ある飲料メーカーの社員は、自助努力の限界に来ていたと振り返る。ようやく巻き起こった値上げラッシュにより、飲料メーカー各社の収益性の改善が期待できそうだ。
ただ、今後の展開をめぐっては一抹の不安が拭えない。最大の要因は、業界トップのコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(コカ・コーラBJH)と、2位のサントリー食品などとの間で値上げの踏み込み具合に差が見られることだ。
コカ・コーラBJHは今年2月、業界で先陣を切って大型ペットボトル製品の値上げを発表している。5月1日から出荷価格で5~8%の値上げを実施。製品ごとの具体的な値上げ幅は不明だが、小売価格ベースでおおよそ10円程度の値上げと見られている。
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