――NPOや福祉サービスの存在を伝えることだけでも、ケアになりうると。
今野:あとは、身近な方の「最近ちょっと様子が違うな」というサインを見逃さないようにしてほしいということ。おかしくなっていく兆しってあると思うんです。
被害を受けている人は頑なになってしまって、話しても通じないことも多いかと思いますが、まめに連絡を取っておいて、根気強く付き合って、今なら通じるなという時を見計らって相談窓口へ向かう背中を押す。相談窓口より前の段階では、我々が直接関わりを持つことはできませんから。
「個人の問題」にしてはいけない
――そう思うと、第三者が果たす役割はやはり大きいですね。
今野:そうですね。それに関連して言うと、ハラスメントを個人の問題に矮小化して、社会の問題なんだという認識が抜け落ちると、根本的な解決に向かっていかない、というのは大事な考え方だと思います。
ミクロな認識も大事なんですが、私たち人間は社会的な承認を求めているので、「自分が受けた仕打ちは、社会的に非難されることなんだ」ということが身近な人との会話の中で証明されるのが一番大事であり、「個人がうまく適応できなかった」という話にしてはいけないんです。
私は Yahoo!ニュースのニュース個人という枠で連載をさせていただいていますが、その記事を読んでエンパワーされたと言ってくださる人もいます。社会にこういう記事があるということ、情報が共有されていること自体が効力を持つ。人それぞれにできる社会との関わり方があるのだと思います。
誰かがストライキをする、誰かがそれを報道する、それを誰かが読んで後押しされ、さらに次のストが生まれる、という好循環を作っていくのが大事だと思います。
必要なのは社会と切り離さないケア。自分がされた仕打ちは社会的に正当ではないんだ、と証明されることが何よりの回復の手がかりになると思います。
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