ただ、スト自体はそれなりに勝率が高いと言えると思うのですが、ストをやるところまで労働者たちが団結し、意思を統一するのはそれなりに難しいかと思います。
―― ストはどういった業態で多いのでしょうか。
今野:今、私たちが関わっているものはほとんどがケアワークですね。介護、保育などの領域です。悪質な経営者によって無理な労働条件を強いられることが多発していること、またサービスの質の低下によって利用者に悪影響が出ることに対して見過ごせないと従業員が申し立てをするというケースも多いと言えます。
第三者にできることとは?
――今後、われわれはハラスメント被害者へのインタビューを進めていきます。被害に遭った方とのやりとりにあたって、POSSEで意識されているのはどんなことでしょうか。
今野:……難しいですね。
――単一の正解はないとは思うのですが。
今野:1つ言えるのは、あくまで支援者として「適度な距離」を保つということでしょうか。人間関係を深くしすぎると、相手からの期待も高まり、認識の齟齬の余地も大きくなってしまうことがあります。中でも、方向性をこちらから強く指し示さず、あくまで情報提供を中心にして、それを元に身の振り方を判断してもらうことに徹するというのは意識しています。労働運動では昔から「代行主義」といって、被害者を運動関係者が代弁することが弊害として指摘されてきました。ハラスメント被害や、メンタルヘルス疾患を伴う場合には、より注意が必要だと思います。
――この連載ではハラスメント被害者だけではなく、その周囲の人々(友人、パートナー、家族など)にも焦点を当てていきたいと考えています。今のお話は、「ハラスメント被害者と接する第三者」にも役立つ視点だと思いますが、ほかにはどんなことがありますか?
今野:「しんどくなったらあそこに電話してみたら」という情報を、早い段階で周知しあってほしいですね。
私たちのようなNPOや行政の施策に繋がることができたケースは、いざというときに頼るべき場所としてもともと私たちやその他の機関のことを知っていたというケースが非常に多いんです。情報が頭の片隅にあって、キツくなったときにそれを思い出して連絡をくれるというのが少なくないのです。
というのも、いざ追い詰められてから地力で情報収集をしたり、ゼロから一気にいろんなことを把握しようとしたりしても、なかなかのみ込めないわけです。「そんなこと言ったって明日また6時から出勤だし」となってしまう。
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