ZOZO SUIT終了「5つの失敗」裏で得た意外な財産 夢は破れたが大胆すぎる施策には意味があった
ZOZOの業績が好調です。直近決算の2022年3月期(2021年度)は商品取扱高、営業利益ともに過去最高となりました。株価も回復し昨年、ひさしぶりの時価総額1兆円超えを記録した場面もありました(その後、日本株全体の低迷もあり直近の時価総額は約8400億円)。
そのような好状況の中で先週、ひっそりとサービス終了したのが全身を計測するボディスーツのZOZO SUIT(ゾゾスーツ)です。ZOZOにとってZOZO SUITとは何だったのか、何を得て何を失ったのか。あらためて今、考えてみたいと思います。
先に2つ強調しておきたいことがあります。ベンチャー経営者というものは周囲が「そんなこと無理だよ」と思うあたりにビジネスチャンスを見つけ、ほかのひとたちの腰が引けている間に突破しようと行動するのが性(さが)です。
ZOZOは冒険という財産を得た
私も遠い昔、ベンチャー経営者だったことがあるのでこの点だけは譲れないのですが、今回紹介する失敗の話は損益の数字上の失敗であって、ZOZOの冒険が失敗したのではない。ZOZOは冒険という財産を得たということです。
もう1つ先に強調しておくことは、ZOZO SUITが始まった2018年と現在で「ZOZOに何がなくなったのか?」を比べてみれば一目瞭然なのは前澤友作さんがいなくなったことです。
私は6月に出す新刊『日本経済復活の書』の中でジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、スティーブ・ジョブズと比較して「日本経済に欠けているものは頭のイカれた経営者だ」という主張をしています。「イカれた経営者」という言葉はきつく見えるかもしれませんが、けなす意図はまったくなく、悪い意味で言っているのでもなく、むしろ褒めています。大胆でとがっていて常人には理解できないが、世の中を大きく変えるほどの力を持っている経営者という意味で使っています。
ZOZO SUITが始まった当時、これはZOZOとは別の企業相手の仕事でしたが私はビジネスパートナーと一緒にアメリカのDX(デジタルトランスフォーメーション)技術を日本企業に紹介する仕事をしていました。そしてこの時期、業界全体でホットなテーマだったのがデジタルによる採寸技術でした。
人間1人ひとり体型が違うのでアパレル業界のXS、S、M、L、XLの5サイズ展開ではどうしても取りこぼしてしまう顧客がでてきます。デザインはいいけれども試着してみたら、サイズが合わなくてイマイチということで逃してしまう顧客がどのブランドでも必ずいます。
それが何割ぐらいで、その人たちの体型に合わせてデザイン変更したら売り上げが上がるのか、それとも既存客が離れて売り上げが逆に下がるのか、みんなわからず勘でアパレル経営を続けているのが今でも業界の現状です。
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