ZOZO SUIT終了「5つの失敗」裏で得た意外な財産 夢は破れたが大胆すぎる施策には意味があった
ここがいちばんの転換点でしょう。1月にZOZO SUITが始まってまだ間もない10月にZOZOはPB商品を「ZOZO SUITなしでも購入可能」にルールを変更します。
初年度200億円の販売目標だったPB商品のZOZOは7~9月実績で注文が15.4億円、発送実績が5.4億円と受注に陰りが見え生産は遅れていました。生産の納期遅延を年内に解消して受注を増やすにはルール変更が必要だったのでしょう。ZOZO SUITなしでも「身長、体重、年代、性別」を入力すれば最適サイズが算出されてカートに入れられる販売方式に変更されたのです。
「新技術の採用によりZOZO SUITなしでも購入可能に」
と当時、ZOZOがアピールしたのですが、結局のところこの段階でZOZO SUIT配布計画は大幅縮小されます。
2018年10月段階での修正計画ではそれまで600万~1000万枚のZOZO SUITを70億円かけて配布する計画から、最大300万枚を40億円かけて配布する計画に縮小されたのです。以後、ZOZO SUIT計画は大幅に変更されていきます。
2019年4月、ZOZOが設立以来初の減益決算を発表します。当時のメディア報道をみると「PBの失敗」が業績の足を大きくひっぱったとされています。前澤社長(当時)自身、敗戦の弁として「PBの数多くのサイズ展開は必要なかった」「ZOZO SUITを着て12回も写真を撮るのはハードルが高かった」と当初の構想を全面的に反省しています。
出店企業との競合を招いてしまった
その後、第5の失敗要素が語られ始めます。
ZOZOは多くのアパレルブランドが商品を販売する日本最大のアパレルプラットフォームです。そこでプラットフォームの運営会社が、出店企業と直接競合するPB商品を売り出すことはやるべきではなかったという意見が広まります。
現実にこの前後、有力な国内ブランドがZOZO離れの動きを見せました。2019年9月に前澤友作氏がZOZOを去り、澤田宏太郎・新社長が経営の立て直しを図ったのは社外の立場で見ればおもにこのポイントでの失点回復に見えます。澤田社長の下で出店ショップ数は再び右肩上がりの回復を見せ、その後ZOZOの業績は回復します。
さて、ZOZO SUITは終了しましたが、実は現在、ZOZO SUIT 2という業務用のサービスでZOZO SUITのノウハウは継続しています。アパレルブランドの商品設計はもちろん、他用途としてヘルスケアやダイエット、スポーツなどの領域で解析データを活用する研究も進められているそうです。
その一方で、これは評論家としての私の思いですが、ZOZO SUIT 2の最大のマーケット領域はやはりZOZOTOWNの利用者がアパレル商品を買う際のイノベーションにあるはずです。
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