ZOZO SUIT終了「5つの失敗」裏で得た意外な財産 夢は破れたが大胆すぎる施策には意味があった
そのような背景からカメラやセンサーで顧客の体型を計測して自社ブランドの場合どのサイズが適正かをアドバイスするさまざまな技術がその当時からアメリカでも開発されていて、日本のアパレル各社がその技術の導入実験を重ねていました。
さまざまな企業が少額の投資で実験をしているさなか、ZOZOが大規模なZOZO SUITの無料配布を開始したのがこの時期、2018年1月でした。発表されたのはプライベートブランド(PB)「ZOZO」の販売の前提としてこのZOZO SUITが使われるということでした。
ZOZO SUITで全身の立体データを採寸することで、数千から数万のサイズパターンの中から自分にぴったりのサイズのPB商品が購入できるというのです。
当時、この発想に私も大きな衝撃を受けたことを覚えています。ZOZOのアイデアは以下のものでした。
② ほぼオーダーメイドといっていい製品をスマートファクトリーで顧客毎に製造して迅速に届けることができる
③ 結果として顧客の体型にジャストフィットするため顧客満足は高く、返品や交換が不要になるだろう
④ その価格がTシャツ1200円、デニムジーンズ3800円とユニクロと同等価格
⑤ (これは当時の私の推測ですが)本丸はその後に発売するビジネススーツ
「もしこれが成功したらアパレル革命が起きる」
当時、私はそう思ったものでした。
ジーンズとビジネススーツは体型に合わせるのが難しい
理屈上はそのとおりです。ジーンズとビジネススーツは多くの顧客、とくに女性にとってはいちばん体型に合わせるのが難しいアイテムで、ヒップサイズが合ってもウエストが合わない、ないしはその逆、ないしはシルエットが体型にフィットしないといったことの繰り返しで、さまざまなブランドの試着を重ねてようやく自分にフィットするタイプがみつかるような商品なのです。
私の場合、デニムについては「時代遅れだ」と自虐的な思いをしながら結局ストレートタイプのジーンズを購入しています。スリムテーパードデニムはどのブランドで何度試着しても体型に合わない。ところがそのスリムテーパードデニムをZOZOは数千パターン用意してくれて、しかも測定も製造もDXで提供してくれるというわけです。
期待感が盛り上がって始まったこのZOZO SUITですが、その後、皆さんがご存じのようにビジネスとしては失敗の道を歩みます。主に失敗の要素は5つあります。
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