「奨学金500万円」女性が早く返す為に選んだ仕事 すぐ隣には「貧困という悪魔」が口を開けている

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学問に真面目に打ち込むことで、つねに金欠だったという松尾さん。東京にはいろいろなアルバイトがある。

「講義がない日はパン屋バイトをしたり、長期休暇はベンチャー企業のインターンに出たりしていました。

稼げたのは通販番組の『番組終了後30分以内』の増員電話オペレーター。日払いだったので、ほかのバイトの給料日までをつなぐのに助かりました。電話オペレーターって慢性的な人手不足なので、よく現場に入れてもらえました」

しっかりと大学に通い、勉強好きでもあった松尾さんは、大学3年生時に大学院への進学を決意する。

「勉強していることが楽しかったので、親からの扶養が2年延びるということが家族として許容されるのであれば、大学院に行きたいなと思っていました。経済的に許してもらえないかなと思っていたのですが、両親からは『行くと思っていたよ』とあっさり許されました」

こうして、周りの友達が就職活動をはじめるなか、松尾さんは大学院試験の対策に取り掛かる。進学を希望する国立大学の院試を複数受けるなかで、アルバイトの両立はなかなか大変だったようだ。

「通っている大学とは別の大学院も受けようと思ったのですが、当時は兄も仕事の関係で海外に行ってしまい、一人暮らしになったので家賃を自分で払う必要がありました。また、実家で大学受験の勉強をしていた頃と違い、自分を律しないと何も進みません。そこで、朝からパン屋のバイトを入れて、必然的に早起きするようになりました。パン屋で働いてから、勉強という毎日です」

一人暮らしでダラしなくなる者が多いなか、なんとかバイトのおかげもあってか、大学院に進学。ここでさらに奨学金を追加する。

「学部時代は日々のバイトに追われ、勉強の時間が取れていないことも多かったんですよね。でも、大学院では勉強に全振りしたかったので、バイトは週末だけ。収入が減ったため、奨学金を大学院の2年間では追加で115万円借ります。学部時代の奨学金を足すと約500万円です。結構、借りましたね」

大学院は2年の修士課程、3年の博士課程がある。本音を言えば「博士に進みたかった」松尾さんだが、2年で修了して就職することに。

「大学院に入学する時点で『博士まで行かない』と決めていました。というのも、博士号を取るまでは茨の道ですし、その後はポスドク問題があります。返せる当てのない奨学金を抱えた私に博士は現実的ではなかったんですね」

「手っ取り早く返せるか」でコンサル会社に就職

さて、奨学金の返済にこの先、20年もかけると、どんどん利子がついてしまう可能性があるため(今は低金利だが、実際、将来どうなるかはわからない)、松尾さんは就職先を、「奨学金をいかに手っ取り早く返せるか」で決める。

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