「奨学金290万円」女性、年収120万円での返済生活 非常勤講師を経て正規雇用も、パワハラで退職

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大学進学で奨学金を290万円借りた三宅美野里さん(37歳・仮名)。毒親のもとに育ち、摂食障害を抱えつつ、非常勤講師として勤務。年収120万円時代を乗り越えますが、パワハラ被害にあって働けない状態になったそうです。(写真:recep-bg/GettyImages)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

さまざまな職業の人たちから体験談が寄せられる本連載。大学・大学院卒業後の進路もさまざまだが、今回話を聞いた三宅美野里さん(37歳・仮名)は現役の占い師である。

中学生まで東海地方で過ごし、高校進学と同時に北関東に引っ越した三宅さん。聞けば、父親が大変な暴れ者だったという。

「父はギャンブル、DV、酒を飲んでは暴れるという、典型的なダメな父親。母や私たちきょうだいは生活のために耐えていたのですが、私が高校に上がるタイミングで母は『もう一緒には住めない』と判断し、離婚しました」

こうして母親の地元の北関東へと引っ越した三宅さん。とはいえ、母親も手に職があるわけではなく、母子手当(児童扶養手当)と学費免除はあったものの、経済的に余裕のない生活だった。

個人塾の先生が「奨学金で進学」のススメ

そんななか、転機が訪れる。高校時代、個人塾の先生と出会ったのだ。

「私はもともと成績が優秀なほうだったのですが、両親の離婚や、引っ越しに伴う友達との別れなどが重なり、高校入学後はすっかり気持ち的に沈んでしまっていたんです。勉強どころではなくて、家計のこともあり、就職しようと思っていました。

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