日本の教育機関にとって、大きな課題となっている奨学金の延滞問題。日本学生支援機構は、大学などの教育機関の奨学金延滞率を4月19日に発表。独自集計した大学別のランキングを作成し公表した(「独自集計!全大学「奨学金延滞率」ランキング」)。なお初出時は平成26年度版ランキングだったが、その後、最新の平成27年度版ランキングに更新している。
今回は、大学以外の教育機関のうち、高等専門学校(以下「高専」)の奨学金延滞率をランキングにまとめた。
高専は、高校卒業後に進学する「専門学校」とは異なり、中学卒業者を対象とした、5年制の学校(商船高専は5年半)。高度経済成長期に必要な技術者の養成を目的として、1962年に初めて設けられた。
現在、国公私立合わせて全国に57校がある。16歳から5年間の一貫教育が特徴で、機械、電気、情報、建設、建築、商船といった専門学科のうち、3~7学科が設置されていることが多い。実験や実習を重視した教育課程で、大学とほぼ同程度の専門的な知識や技術を習得できる。最近では、情報デザインや国際流通といった新しい学科も設置されており、産業構造の変化や科学技術の進展への対応も進んでいる。
半数近くの23校が延滞率0%
学生の進路が多様なことも特徴だ。5年間の教育で得た知識と技術をさらに深めたい卒業生のために、さらに2年間の専攻科が用意されていて、合計で7年間の一貫教育も可能になる。この専攻科を修了し、大学評価・学位授与機構の定めた条件を満たせば、大卒と同等の学位が授与され、大学院への進学や、大卒枠での就職の道も開ける。さらに、通常の大学3年次への編入も可能で、卒業生の約4割がこうした進学の道を選んでいる。
高専全体では、奨学金延滞率の平均は0.7%と、大学の1.3%を大幅に下回る。半数近くの23校が延滞率0%と安定感が高い。特に国立の高専は、授業料が全国一律で年間23万4600円と低額だ。国立大学の授業料は50万円を超えることが多い点を考えると、学生への金銭的負担が少ないといえるだろう。また、高専の設置・運営を統括する国立高等専門学校機構のホームページによると、卒業生に対する求人倍率は約10~20倍、就職希望者の就職率はほぼ100%だという。
日本学生支援機構の遠藤勝裕理事長は2016年1月に行った東洋経済オンラインのインタビュー(奨学金「貧困問題」、最大の責任者は誰なのか)で「高専の学生たちは専門教育をしっかり受けている。だから、社会からのニーズが高い」と述べていた。奨学金延滞率のデータも、それを裏付ける結果となっている。高専には、早期からの専門性の高い教育、理論と実践のバランス、柔軟な進路の選択肢といった教育のヒントが詰まっているのではないだろうか。
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