「奨学金500万円」女性が早く返す為に選んだ仕事 すぐ隣には「貧困という悪魔」が口を開けている

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「いろいろと自己実現する前に、まずは奨学金を返すことから始めようと思っていました。そこで、初任給の高いコンサルティング会社に入ることにしました。

年収は1年目から500万円弱ほどで、仕事にも熱心に取り組んだ結果、そのぶん評価もされ、結構早いスピードで昇進し、給料も上がり続けました。でも、毎月3万円を奨学金の返済に回し、7万円は一括返済のために貯めるようにしていたので、実際に使えるお金は全然ありませんでしたね」

学生時代の研究内容や、松尾さんの柔らかい雰囲気からは、体育会っぽいイメージのあるコンサルタントという仕事は正直なところ想像できなかったが、彼女としても予想外の選択だったらしい。

筆者の感想はさておき、仕事に打ち込むなかで社内評価は順調にアップしていったが、それでも松尾さんの不安は消えなかったという。

「社会人になってから奨学金返済の圧力がかかり始めたというよりも、私の場合は借りている最中から奨学金返済が悩みの種になっていました。ちょっとでも気を抜いたらこの競争から脱落してしまうというか、すぐ隣には『貧困という悪魔が口を開けている』という危機感がありました。

そこには、私が女性というのも影響していたと思います。仕事上でも、新人ということよりも女性ということで舐められがちだったし、ハードワークなので身体を壊す可能性もありましたし、実際、在職中は体調不良になったことも。また、結婚し、妊娠したら長期で働けなくなりますよね。その間の返済はどうなるのかという問題がある。おまけに実家も遠いですし、自分で何とかするしかないので、やっぱり焦りというか怖さがありますね。決して立ち止まれないんです」

仕事と返済は順調でも、つねにプレッシャーに押し潰されそうだった松尾さん。その後、新卒入社した会社を3年半ほどで退職。ベンチャー企業での勤務や個人事業主を経験しつつ、学部分の奨学金を返し終えた頃、「やりたいこと」を仕事にしようという気持ちになり、教育系の企業に就職することになった。

「返済が終わったことで、改めて自分がやりたいことを、給料抜きにして考える余裕が生まれたんです。そこで、学生時代に私が専攻していたことが活きる仕事を見つけることができました。

給料はコンサル時代よりも月に10万円以上減りました。でも、今は毎月大きな返済があるわけでもないので、問題なく働けています。自己実現は、奨学金を返したあとでないとできませんでした」

現在は月々8000円で、返済額の残りは80万円。これが妊娠、出産、子育てなどで「働けなくなっても返していける」と思える金額だという。

「夫に頼る」ことがどうしてもできない

現在、松尾さんは結婚しており、家計を共にしている夫がいる。しかし、奨学金返済によって生じた自身の変化に気づいたという。

「奨学金のせいでつねに抱えていた恐怖は、一度遠のきました。だけど、『気を抜いたら死ぬ』という生活があまりにも長すぎたので、いまだに『夫に頼れない』のです。生計を一にしているので、仮に私の給料が減っても夫婦で生活が回っていればいいし、家賃も生活費も一緒に考えればいいのですが、それができない。

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