希少価値のある高級アンティーク時計のオークションが熱気を帯びている。2022年に入ってから開催された国際オークションで、史上最高額での落札が相次いでいるのだ。
例えば、アメリカ競売大手のサザビーズが4月25日に香港で開催したオークションでは落札総額が3億3800万香港ドル(約55億円)に達し、同社のアジア地区の最高記録を更新した。また、その日に出品されたスイスのパテック フィリップの1957年製ピンクゴールド腕時計は6026万5000香港ドル(約9億8867万円)で落札され、同一機種の最高記録を塗り替えた。
イギリス競売大手のフィリップスの見方によれば、高級アンティーク時計の落札価格高騰の背景には主に2つの要因がある。第1に、(富裕層が多い)中国などの「コア市場」で投資商品としての側面が意識されるようになったこと。第2に、新型コロナウイルスの世界的大流行をきっかけに、芸術品への投資と収集を「リスク回避と資産価値保全」の一手段と位置づける動きが強まったことだ。
個人の嗜好より投資価値を優先
「中国本土からのオークション参加者は、特別に希少なアンティーク時計を好む傾向が強い。しかもここ3年ほど、年齢が30歳前後あるいは30歳未満の新世代の収集家が続々と参入している」。フィリップスで中国地区の時計オークションを担当する張源氏は、最近の記者会見でそう述べた。
張氏の見立てによれば、中国本土の収集家には次のような特徴がある。
「入札に対する思い切りがよく、驚嘆すべき資金力を持っている。また、同じアンティーク時計の価値を理解するために外国人の収集家が一般的に5~6年を費やすのに対し、中国本土の収集家は5~6カ月(の情報収集)で入札に臨んでくる」(張氏)
さらに、中国本土の収集家は(入札を検討している)時計の価値が将来的に維持されるか、転売利益がどのくらい見込めるかなど、(個人の嗜好よりも)投資商品としての属性を重視する傾向が強い。一方、外国人の収集家は落札した時計を実用品として身に着けることも少なくないという。
なお、高級アンティーク時計への投資が資産価値保全やインフレ対策として本当に有効なのかどうかについて、張氏はこうコメントした。
「特別に希少な特定の機種で、なおかつ大多数の人々の(普遍的な)審美観に訴える時計でなければ、強力なインフレ対策にはならないだろう」
(財新 駐香港記者:彭胡清鈺、周文敏)
※原文の配信は5月14日
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