中国のネット配車最大手でアメリカのニューヨーク証券取引所に上場する滴滴出行(ディディ)は5月11日、中国当局によるサイバーセキュリティー審査と業務改善命令への対応に関する進捗状況を開示した。
そのなかで同社は、「ニューヨーク上場を廃止しなければ、サイバーセキュリティー審査と業務改善命令への対応を完了できない」「サイバーセキュリティー審査と業務改善の完了後でなければ、正常な経営に復帰できない」という見解を明らかにした。
さらにディディは、同社が香港証券取引所を含む(中国本土以外の)国際的な証券市場に鞍替え再上場を目指す場合、「サイバーセキュリティー審査への合格が前提条件になる」と説明。そのうえで、今後の対応について「まず正常な経営への復帰を果たし、その後に(アメリカを除く)別の証券取引所への上場機会を探ることになる」と述べた。
なお、ディディは4月18日付けの情報開示で、「(ニューヨークの)上場廃止の完了前に、別の証券取引所への上場を申請することはない」と説明していた。5月11日付けの開示では、そこに「サイバーセキュリティー審査と業務改善の完了」および「正常な経営への復帰」という2つの前提条件が追加された格好だ。これは、鞍替え再上場の時期が(これまでの想定より)さらに先延ばしになるのが確実なことを示唆している。
アメリカSECもディディを調査
ディディは2021年6月30日にニューヨークに上場して48時間も経たないうちに、中国当局から国家安全法およびサイバーセキュリティー法に基づく審査を宣告された。その後、同社は配車アプリの新規ユーザーの一時登録停止、アプリの一時配信停止、当局の係官の社内常駐など、一連の処分と監督強化の激震に見舞われ、その余波は今もなお続いている。
2021年12月3日、ディディは(中国の法規を順守するために)ニューヨークでの上場廃止と香港市場への再上場の準備を開始したと発表。来る2022年5月23日に北京で臨時株主総会を開き、ニューヨーク上場の廃止の是非について決議を行う予定だ。
同社は中国当局だけでなく、アメリカ当局からの圧力にも直面している。ディディは5月2日に発表した2021年の年次報告書のなかで、同社のアメリカでの上場(に法規違反がなかったかどうか)に関してアメリカ証券取引委員会(SEC)の調査を受けている事実を明らかにした。
これに関してディディは、「われわれは(SECの)調査に協力しているが、自社に適用される(中国の)法規を厳格に順守する」とコメントしている。同社はSECの調査の詳細については明らかにしていない。
(訳注:5月23日の臨時株主総会は予定通り開催され、ニューヨーク上場の廃止が株主の投票により承認された)
(財新記者:岳躍)
※原文の配信は5月12日
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