7月7日、中国の独占禁止法の執行機関である中国国家市場監督管理総局(市場監管総局)は、インターネット業界の複数の大手企業が、独占禁止法上の「事業支配力の過度な集中」を避けるために定められた事前の届け出を怠っていたとして、該当する22件に行政処分を下した。
具体的には、配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)が8件、電子商取引(EC)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)が6件、ネットサービス大手の騰訊(テンセント)が5件、EC4位の蘇寧易購(スーニン)が2件、ネット出前最大手の美団(メイトゥアン)が1件の処分を受けた。ただし、いずれの案件も競合他社の排除や制限の事実は立証できないとし、罰金は1件当たり50万元(約855万円)にとどまった。
処分件数が最多の滴滴は、直近で別の当局からも処分を受けたばかりだった。7月2日に国家インターネット情報弁公室は滴滴に対し、中国共産党の中央サイバーセキュリティー情報化委員会弁公室の名義で、国家安全法およびサイバーセキュリティー法に基づく審査を行うと発表。滴滴は審査期間中の新規ユーザーの登録停止を迫られた。その2日後、国家インターネット情報弁公室は、滴滴のアプリに個人情報の収集・使用に関する重大な法令違反があるとして、アプリの配信停止を命じた。
昨年から市場監管総局は、大手ネット企業による独占的行為の取り締まりを強化している。その重点の1つが、ネット大手がM&A(合併・買収)により有望な新興企業を傘下に収める「青田買い」の監督だ。ネット業界で広く用いられてきたVIE(変動持ち分事業体)と呼ばれる手法のM&A案件を、市場監管総局が監督対象に加えたことにより、事前審査の届け出漏れに対する行政処分はすでに44件に上っている。
さらに巨額の罰金が科せられる可能性も
現行の独禁法では、競合他社の排除や制限が立証された場合にのみ、違反者に対して企業分割命令または(不利益部分に関する)原状回復命令が可能となる。それらが立証されず、違反行為が事前届け出の怠りのみの場合、罰金の最高額は50万元だ。
しかし、2020年1月に発表された独禁法の改定案には、事前申告漏れの罰金の上限を違反企業の前年売上高の10%とする旨の条文が盛り込まれた。これは現行の最高額からの大幅な引き上げだ。事前申告を怠ってきた大手ネット企業が当局から独禁法違反とみなされ、巨額の罰金を科せられるリスクが高まっている。
(財新記者:原瑞陽、銭童)
※原文の配信は7月7日
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