シャルリの描き方の違いに見る差別意識

塩尻宏・元駐リビア大使に聞く(前編)

「シャルリ・エブド」社は、一週間後に発行した1月14日版に、預言者ムハンマドが「私はシャルリ」と書いたポスターを掲げながら涙を流している風刺画を再び掲載し、改めてイスラーム世界の批判を受けました。アズハル大学も即日声明を発表し、「シャルリ・エブド社」が再び預言者の諷刺画を発刊したことを強く非難すると共に、全てのイスラーム教徒に対して「預言者の慈愛や人間性は遥かに気高いものである」としてこのようなおぞましい行為は無視するよう求めている。

また、フランシスコ・ローマ教皇は、1月15日にフィリピン訪問途次の飛行機内で記者団に対して、「神の名をかたって行われる悲惨な暴力は断じて正当化できない」と非難すると共に「他者の信仰を侮辱したり、もてあそんだりしてはならない」と述べて、「表現の自由」にも一定の限度があるとの考えを示しています。これらが、キリスト教社会でもイスラーム教社会でも、理性ある人々のコンセンサスでしょう。

テロという言葉の使い方も考える必要がある

世界では、不満を抱えた若者による銃乱射事件がたびたび起きていますが、イスラーム教徒による事件は「テロ」と呼ばれ、キリスト教徒などの場合には「テロ」と呼ばれないのはなぜなのか。そういうことも考える必要があるのではないでしょうか。

――フランスは北アフリカを植民地にした歴史があり、イスラーム世界の事情にも精通しているはずです。オランド大統領は、グランゼコールを卒業した高度な知識人であり、左派(社会党)の出身です。しかし、「宗教の問題ではない」と前置きしながらも、「表現の自由」を声高に主張して、結果としてイスラーム世界に対抗する印象を与えることになってしまった。

それは政治の世界の論理だからです。左派か右派かを問わずフランス国民の多くが「共和国の原理」、すなわち「政教分離」、「表現の自由」を暴力で侵されたと怒って興奮状態にあるときに、大統領が、それを抑制しようとせず、その場のポピュリズムに乗ることは、政治家としてはよくあることでしょう。

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