シャルリの描き方の違いに見る差別意識 塩尻宏・元駐リビア大使に聞く(前編)
2012年にはもっと酷いのもあります。“LE FILM QUI EMBRASÉ LE MONDE MUSULMAN(ムスリム世界に火をつける映画)”との説明の下に、素っ裸の預言者ムハンマドが腹這いになって、映画カメラマンに向けて尻を突き出して いる様に描かれ、彼に“ET MES FESSES ? TU LES AIMES; MES FESSES ?(わしの尻か? お前はそれが好きなのか、わしの尻が?)”と言わせている風刺画です。イスラーム教徒にとっては耐えがたい侮辱であることは容易に想像 できます。
ドゴール元大統領の風刺には発禁処分
「シャルリ・エブド」紙は、イスラーム教徒が嫌悪するようなこうした風刺画を何年もの間、何枚も執拗に掲載してきました。キリスト教やユダヤ教も風刺しているではないか、という反論も出るでしょう。しかし、キリスト教やユダヤ教に対する描き方は、イスラーム教に対するものに比べると、明らかに「節度」が感じられます。
「シャルリ・エブド」紙の前身「ハラキリ・エブド」紙は、かつてフランスの英雄シャルル・ドゴール将軍(元大統領)の逝去を風刺的に伝えたとして、時のフランス政府から発禁処分を受けています。当時のフランス政府は、「表現の自由」にも「制限」や「節度」があると判断したわけです。
現在のドイツでもナチズムを礼賛したり、ホロコーストの事実を否認したりすることは禁止されています。しかし、風刺の対象がイスラーム教になると、「節度」より、「表現の自由」の方が尊重される。この底流には西欧キリスト教社会におけるアラブ・イスラーム世界に対する差別意識の存在があると思います。
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