シャルリの描き方の違いに見る差別意識

塩尻宏・元駐リビア大使に聞く(前編)

襲撃事件後、「シャルリ・エブド」が預言者ムハンマドの風刺画を繰り返して掲載したことに抗議するデモが中東の各地で行われた(写真は1月19日、テヘランのフランス大使館前)(ロイター/アフロ)

2012年にはもっと酷いのもあります。“LE FILM QUI EMBRASÉ LE MONDE MUSULMAN(ムスリム世界に火をつける映画)”との説明の下に、素っ裸の預言者ムハンマドが腹這いになって、映画カメラマンに向けて尻を突き出して いる様に描かれ、彼に“ET MES FESSES ? TU LES AIMES; MES FESSES ?(わしの尻か? お前はそれが好きなのか、わしの尻が?)”と言わせている風刺画です。イスラーム教徒にとっては耐えがたい侮辱であることは容易に想像 できます。

ドゴール元大統領の風刺には発禁処分

「シャルリ・エブド」紙は、イスラーム教徒が嫌悪するようなこうした風刺画を何年もの間、何枚も執拗に掲載してきました。キリスト教やユダヤ教も風刺しているではないか、という反論も出るでしょう。しかし、キリスト教やユダヤ教に対する描き方は、イスラーム教に対するものに比べると、明らかに「節度」が感じられます。

「シャルリ・エブド」紙の前身「ハラキリ・エブド」紙は、かつてフランスの英雄シャルル・ドゴール将軍(元大統領)の逝去を風刺的に伝えたとして、時のフランス政府から発禁処分を受けています。当時のフランス政府は、「表現の自由」にも「制限」や「節度」があると判断したわけです。

現在のドイツでもナチズムを礼賛したり、ホロコーストの事実を否認したりすることは禁止されています。しかし、風刺の対象がイスラーム教になると、「節度」より、「表現の自由」の方が尊重される。この底流には西欧キリスト教社会におけるアラブ・イスラーム世界に対する差別意識の存在があると思います。

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