1億円積まれても冷蔵庫は絶対に使わない理由 「ご先祖様からの知恵」の圧倒的合理性に学ぶ

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あ、あと言い忘れましたが、干すのも漬けるのも、保存することによって栄養価まで高まるというのも冷蔵庫にはない大いに優れた点である。特に漬け物は今注目の「発酵食」であることは聞いたことがある方もおられよう。

人生も食べ物も腐らせない生活の爽やかさ

ってことで、今となっては冷蔵庫が完全な「ナゾの装置」としか思えなくなっているのだが、改めて考えてみればそれも当然のことで、われら日本人は冷蔵庫のない時代を延々と生き延びて、その間にわが国の気候風土食材にあった保存方法を気の遠くなるような時間をかけて編み出してきたわけです。

となれば、そこに圧倒的合理性があるのは当然で、たかだか100年の歴史しかない冷蔵庫が太刀打ちできないのはあったりまえなのであります。

つまりはですね、現代において豊かな人生(らしきもの)を送るには大きく分けて二つの方法がありまして、その一つは圧倒的多数の人がやっているように、次々と売り出される「生活を豊かにしてくれる」「高機能な」新製品を、お金を稼いで次々と手に入れること。それはそれでいいと思いますが、その「圧」が強すぎて、もう一つの方法がすっかり忘れ去られていることが実にもったいないと思うのであります。

それは、ご先祖様が昔から積み重ねてきた知恵を受け継ぐこと。なぜかそれは「古臭く」「面倒臭い」ことのように決めつけられている昨今ですが、やってみれば驚くほど合理的でラクだったりするんである。

ってことで、結論としては、この世は閉塞感にまみれているどころか、まだまだ隙間だらけ、幸せになるための伸び代はいっぱいあるということを今の私は知っているのであります。

ということを、冷蔵庫をやめるかどうかにかかわらず、ご参考までにお伝えしておこうと思った次第。あ、ちなみにこれもよく言うことですが、もし私が「1億円あげるから冷蔵庫を使ってほしい」と言われたら、もう何の迷いもなく即座に断ります。人生も食べ物も腐らせない生活の爽やかさを手放すほどの価値のあるものなどこの世にありましょうか?

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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