差し伸べられる救いの手には限りがある……非常に重みのある言葉だが、かくいう火野さんは現在、両親とは縁を切った状態なのだという。
募る妻と義母への感謝の想い
晴れて弁護士にはなれたが、生まれながらの境遇とストイックな勉強生活のせいか、すでにこの世を達観したかのような印象の火野さん。
借金で首が回らなくなった相談者たちの話を聞く仕事の日々だが、前出のとおりプライベートでは高校時代からの恋人と結婚し、子宝にも恵まれて幸せな日々を過ごしている。大人になってますます募るのは、妻と義母への感謝の気持ちだ。
「高校時代に妻に『将来、どんな職業に就きたいの?』って聞かれたので、『公務員』と言ったら『夢ないね』と言われたことがありました。そこで、『だったら、弁護士になる』と啖呵を切ったのが、今の仕事を目指すきっかけのひとつなんですよ。
あと、大学の入学金を一時的に肩代わりしてくれた、お義母さんも本当に人格者で。娘の彼氏に何十万円も貸すって相当なことだと思います。当時はこれまでの自分の振る舞いがよく受け止められていたのかなと思っていましたが、今思えば、僕に投資してくれていたんだと思います。
そう考えると、妻と付き合っていなかったら、弁護士にはなっていなかったと思いますし、お義母さんがいなければ大学にも入ることができませんでした。
結局、誰かが救ってくれないと、貧困からは抜け出せないんだと思います。もともと、うちは祖父母の代から貧乏が続いていて、母方の祖父と離婚した祖母はもはやどこにいるのかすら、わからない状態です。
だから、貧困が連鎖しているのは間違いないと実感しています。僕も妻とお義母さんがいなかったら、どうなっていたかわかりません」
「救いの手を差し伸べてくれる存在の重要さ」という展開から話が始まると、美しい美談を想像してしまいがちだ。しかし、そこには引き続き、救われなかった貧困と、残酷な現実も残っているようだ。
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