「奨学金1500万円」借りた弁護士の"2人の恩人" 毒親・貧困家庭脱出の背景に「理解ある恋人」

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差し伸べられる救いの手には限りがある……非常に重みのある言葉だが、かくいう火野さんは現在、両親とは縁を切った状態なのだという。

募る妻と義母への感謝の想い

晴れて弁護士にはなれたが、生まれながらの境遇とストイックな勉強生活のせいか、すでにこの世を達観したかのような印象の火野さん。

借金で首が回らなくなった相談者たちの話を聞く仕事の日々だが、前出のとおりプライベートでは高校時代からの恋人と結婚し、子宝にも恵まれて幸せな日々を過ごしている。大人になってますます募るのは、妻と義母への感謝の気持ちだ。

「高校時代に妻に『将来、どんな職業に就きたいの?』って聞かれたので、『公務員』と言ったら『夢ないね』と言われたことがありました。そこで、『だったら、弁護士になる』と啖呵を切ったのが、今の仕事を目指すきっかけのひとつなんですよ。

あと、大学の入学金を一時的に肩代わりしてくれた、お義母さんも本当に人格者で。娘の彼氏に何十万円も貸すって相当なことだと思います。当時はこれまでの自分の振る舞いがよく受け止められていたのかなと思っていましたが、今思えば、僕に投資してくれていたんだと思います。

そう考えると、妻と付き合っていなかったら、弁護士にはなっていなかったと思いますし、お義母さんがいなければ大学にも入ることができませんでした。

結局、誰かが救ってくれないと、貧困からは抜け出せないんだと思います。もともと、うちは祖父母の代から貧乏が続いていて、母方の祖父と離婚した祖母はもはやどこにいるのかすら、わからない状態です。

だから、貧困が連鎖しているのは間違いないと実感しています。僕も妻とお義母さんがいなかったら、どうなっていたかわかりません」

「救いの手を差し伸べてくれる存在の重要さ」という展開から話が始まると、美しい美談を想像してしまいがちだ。しかし、そこには引き続き、救われなかった貧困と、残酷な現実も残っているようだ。

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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