また、火野さんは家族関係も一風変わっていた。
「両親は年の差が15歳もあって、母は19歳で私を産んでいるんですよね。わけのわからないままに結婚して子どもを産んだというか、『子どもが子どもを産んだ』感じです。無計画というか、何も考えていないというか……。
僕には3歳下の妹がいるのですが、中学生になった時に13歳下の弟もできたんですよね。母はネグレクト気味でもありましたが、子どもがそんなにいても、両親は2人とも働く気はあまりなかった。いわゆる毒親です」
そんな、ハードな家庭環境で育った火野さん。高校は地元の公立高校に進学。この連載で度々出てくる「自称・進学校」である。
「少子化で今はもうなくなったのですが、当時、同級生は160人ぐらいいて、そのうちの半分は専門学校に進学し、8人ぐらいは地元の私立大学に指定校推薦で入るような学校でした。そのため、周りもそんなに勉強しておらず、文系で都内の私立大学を目指している人は10人にも満たなかったですね」
高校を卒業しても、地元には高卒が就ける仕事は少なかった。「父親のようにカブトムシの販売で生計を立てるのも嫌だった」という火野さんは、大学受験を決意する。
「地元を離れて、東京か大阪の国公立大学の法学部に行きたいと思うようになったのですが、たとえば都内の国公立の法学部って東大や一橋しかないので、圧倒的にレベルが足りなくて。
そこで、早慶やMARCHも受験しましたが、全然ダメ……。最終的に、なんとかセンター利用で引っかかった、日東駒専の法学部に進むことにしました」
合格した大学の学費は年間100万円ほどだったそうだが、入学以前に、50万円の入学金と前期の学費が必要になった。
「入学金を自分で用意しないといけない」人が多く登場する本連載だが、火野さんも高校時代からバイトをしていた。しかし、予想外の出来事が発生する。
「高校入学してからずっと飲食店でバイトをしていたので、入学金なんかの50万円は貯まっている予定だったのですが、『入学時には返すから』と言われ、両親に全部取られちゃったんですよね……。もちろん、返してはくれません。その時は両親ともに働いてなくて、お金がないので身近な私の通帳を使ったのでしょう」
ネグレクトで食事なし、175センチ45キロに
この話を聞いた人の中には「なぜ、親に金の管理を任せたんだ! 自分の銀行口座を準備しろ!」と、火野さんを叱責する読者もいるかもしれないが、当時の状況はなかなか苛烈だった。
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