「奨学金1500万円」借りた弁護士の"2人の恩人" 毒親・貧困家庭脱出の背景に「理解ある恋人」

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この国は金融教育ができていないので、『借金』を悪いことだと思っている人が多い現状があります。でも、奨学金のように自分に投資して、自分の価値を上げるのが一番簡単な生涯収入の増やし方だと、僕は思うんです。

10代という若さで人生の大事な決断をしないといけないのはおかしい気もしますけど、それでも貧困家庭の子どもが、ずっと貧困でいないといけないわけじゃないですよね」

返済生活は苦しい時期も

今でこそズバズバとした口調でこのように語る火野さんではあるが、それでも弁護士になった当初は、月6万4000円の返済は軽くはなく、働くなかで厳しい時もあったという。

「弁護士になってからすぐに結婚したのですが、税金や社会保険料が引かれると結構生活がキツくなりました。また、2社目に入った事務所がかなりブラックで、逃げるように辞めて貯金がなくなったこともありました。そして、そんな中で子どもが誕生。いよいよ生活がヤバくなりそうでしたが、今の事務所に入ったことでなんとか安定してきた感じです」

そんな、火野さんの現在の弁護士としての主な業務は、債務整理、自己破産などなのだとか。火野さんの両親も自己破産は2、3回経験し、今は生活保護を受給しているそうだが、両親と似たような境遇の相談相手に肩入れしてしまうこともあるのだろうか?

「それはないですね。フラットな気持ちで仕事をしていますよ。でも、それは仕方がないんですよね。だって、自分で差し伸べられる手には限りがありますから……。

これは僕がサバサバしているというよりは、感情移入しすぎたら大変だからですよ。たとえば、僕が担当している離婚事件なんて、犬も食わない夫婦ゲンカの延長線上ようなものです。それを仲裁するような仕事なので、いちいち感情移入していられません。

それに『破産』というのは、その人物に『経済的な死』を与えることになります。それを見届けるのが仕事なので、普通の精神状態では続けられませんよ」

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