フランス襲う「極右テロのリスク急増」の複雑事情 再選したマクロン氏に求められる分断への対処

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極右政党「国民連合」のルペン氏を破って再選をはたしたマクロン氏だが、さまざまな難題が待ち受けている(写真:Nathan Laine/Bloomberg)

フランスの対テロ諜報機関である国内治安総局(DGSI)は、フランスの極右勢力による攻撃リスクが近年、急速に高まっているという衝撃的な指摘をした。国家主義者、内戦を誘発する活動家、またはネオナチなど、フランス全土に1500〜2000人が潜在的に暴力的行動を取りうると見なされているという。中でも数百人はテロ攻撃を実行する態勢が整っているとされ、イスラム聖戦主義と並ぶ脅威と位置付けている。

複数のフランスメディアは、国家テロ対策検察庁には極右に関連するファイルが山積みになり始めていると指摘している。とくに2017年以降、攻撃計画について11件の調査が開始され、進行中の6件の司法捜査を含め、すでに52人が起訴され、12人が有罪判決を受けた。

存在感を増しているアラブ系住民

背景の1つは、人口の約1割に達するイスラム教徒を含む600万人のアラブ系移民が過去にないほど社会に影響を与えていることが挙げられる。実際、30年にわたりフランス社会を取材してきた筆者として、今ほどアラブ系住民が社会に存在感を見せている時代はない。

例えば、公共の場での着用は禁止されているにもかかわらず、頭部を隠すヒジャブ、全身を覆うブルカやニカブを着用するイスラム女性は増えているし、過去には見かけなかった会社の管理職、IT部門の技術者にもアラブ系は急増している。

ただし、フランスは大革命以後の平等意識から政府機関が国民の人種や出身国を調査することは禁じられているので、詳細については数値化はされていない。

イスラム教徒はフランスの法律よりイスラムの教義を優先する。筆者はイスラム系移民に何度も取材をしているが、そのたびに「フランス文化に同化するのは無理」という答えが返ってくる。「国は何度も同化政策を試みたが成功した試しはない」と、パリ大モスクに続くパリ南郊イブリー大モスクのメルン教区長は言う。

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