フランス襲う「極右テロのリスク急増」の複雑事情 再選したマクロン氏に求められる分断への対処

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RNは警察官の権限強化や増員、刑務所内でイスラム聖戦主義が拡散しない対策、再犯率の高い軽犯罪で逮捕・収監された移民系若者の再犯防止策などを打ち出し、国家秩序の回復を強調している。それだけなら多くのフランス人が納得する政策で、今では中道右派・最大野党の共和党(LR)もルペン氏や極右のゼムール氏に似た政策を打ち出している。

しかし、治安対策で過去に最も厳しい政策を打ち出した中道右派のサルコジ元大統領は、内相だった2005年10月末、パリ郊外で始まった移民系2世・3世による暴動に対して、「寛容ゼロ」政策で臨んだために、暴動が全国規模になり、大惨事を招いた。

政権末期の2012年にはフランス南部トゥールーズ周辺でイスラム聖戦主義に傾倒したアルジェリア系移民の若者がフランス兵およびユダヤ人学校を襲撃し、7人を殺害する事件が発生した。

政府に期待しない愛国主義者がネオナチに

DGSIが指摘するところでは、ネオナチ増加が加速したのは2015年1月に発生したイスラム過激派による風刺週刊紙シャルリ・エブドー編集部襲撃テロ、同年11月に起きたパリのバタクラン劇場などで発生した死者130人を記録した同時テロ、さらには翌年にフランス南部ニースの歩道で起きたトラック突入テロ事件で、政府に期待しない愛国主義者がネオナチに走る現象が加速したとされる。

フランス北部ストラスブールなどでは毎年ヒトラーの生誕を祝うコンサートが行われてきた。ナチズム運動取り締まりを徹底するドイツを避け、ネオナチがフランスで活動を活発化させている。

過激な極右思想やネオナチ傾倒者の標的はイスラム系移民だけではない。彼らはヨーロッパ最大規模の60万人の在フランスのユダヤ人コミュニティも敵視し、ユダヤ教礼拝堂シナゴーグやユダヤ食品店を放火している。

さらに伝統文化や国家主義を否定し、移民受け入れを問題視しない極左とも当然ながら敵対関係にある。警察当局は極右と極左の対立がテロや騒乱を引き起こすことをつねに警戒している。極左もイスラム過激派もネオナチもフランスの社会状況が生み出したものだ。

フランス極右は、RNの前身の国民戦線を創始したジャン=マリ・ルペン氏の影響が大きいが、彼は超エリート校であるパリ政治学院の卒業生であり、筆者の1990年代のインタビューでは、反移民より強烈な反共主義者だった。だからこそ、リベラルメディアが大勢を占めるフランスでは嫌われ、すでに極右を脱している娘のマリーヌ・ルペン氏も極右の烙印から解き放たれることはない。

昨年の秋、「OAS」と名乗る極右グループに対する裁判が行われた。そのグループの創設者は、現役だったころの父ルペン氏が率いていた治安部隊の元メンバーのローガン・ニサンだった。懲役9年の刑を言い渡された同被告率いるOASは、イスラム教徒だけでなく、急進左派の不服従のフランスを率いるメランションなどの政治家を攻撃したいと考えていたという。

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