東大教授が熱弁「キングダム」が経済学的に深い訳 経済学者・小島武仁氏が64冊一気読みして分析
春秋戦国時代の秦を舞台にしたすごさ
――今回は短期間で『キングダム』の既刊全巻64冊を一気読みされたとのこと。日ごろから漫画を読む機会は多いですか?
『週刊少年ジャンプ』に載っている漫画が好きで、最近は『スパイファミリー』に注目しています。先日、『キングダム』64巻を読み終わった後、復習がてらアニメもチェックしようと思ったら、『スパイファミリー』がアニメ化されていることに気づいたりして。見るべきものが多いですね。
今回の『キングダム』のように、経済学の視点で漫画を読むという経験は個人的に非常に面白いものでした。普段、漫画は「仕事や研究とは結びつけず、純粋に楽しむために読むもの」という感じなので。
――お読みになって、いかがでしたか。
内容に踏み込む前に少し触れたいのは、『キングダム』の舞台になっている時代は、僕の不勉強かもしれませんが、これまで日本の漫画や小説であまり取り上げられてこなかったんじゃないかということ。例えば『三国志』の時代に関連する作品は多く、僕が最近読んでいる『パリピ孔明』という漫画もその1つです。
『パリピ孔明』は現代への転生という特別な設定が、差別化やヒットのポイントになっているように思います。ただ、この設定が成立するのは、読者がある程度『三国志』に対する共通のイメージを持っていて、諸葛亮(孔明)が何をした人なのかの知識があるからですよね。
一方で、春秋戦国時代の秦に対する一般的な理解は、それほど深くない。それだけに、この時代を舞台に『キングダム』という大ヒット作品を生み出した作者の原泰久さんがすごいと、まず感じました。この時代の興味深さ、面白さを開拓することのすごさです。
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