東大教授が熱弁「キングダム」が経済学的に深い訳 経済学者・小島武仁氏が64冊一気読みして分析

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さらに、秦の始皇帝は征服者のイメージが強く、彼の統治下では焚書坑儒(思想統制)なども行われた。歴史を扱う作品中では悪役的な見られ方をすることが多い気がします。しかし、『キングダム』の嬴政(えいせい)はめちゃくちゃかっこいい。自分の中の固定観念が打ち砕かれたような気がしました。

――後の始皇帝、嬴政の描かれ方が違うと。

例えば、横山光輝さんの『項羽と劉邦』で描かれるのは始皇帝の没後、大混乱に陥った秦の次の王朝、前漢が建てられる時期です。始皇帝が過去の存在として描かれる『項羽と劉邦』を読んだときには、どちらかというと始皇帝にネガティブな印象を持ちました。

ところが、『キングダム』を踏まえつつ、もう一度、彼が行ったことを見直すと、やはり始皇帝はすごいんです。

嬴政による転換は、今に通じるものも多い。「度量衡の統一」や「郡県制の導入」はものすごくインパクトのあるイノベーションで、後世に与えた影響でいうと、三国志の英雄たちと比べても圧倒的に思えます。

そもそも、中国の統一を最初に成し遂げたこと自体が大きなパラダイムシフト、歴史の大転換点でした。『キングダム』のキャラクターの中でも、嬴政はとくに魅力的だと感じました。

呂不韋はとても面白いキャラクター

――ほかにも好きなキャラクターや印象的なキャラクターはいましたか。

主人公の信をあえてはずすと、呂不韋(りょふい)もすごく好きですね。重要な話なので後編で改めて詳しくお話ししようと思いますが、序盤から嬴政と敵対し、相国という高い地位にまで上り詰める呂不韋は、とても面白いキャラクターです。

そしてもう1人、好きというよりは気になる存在という感じですが、11巻が初登場の、趙国三大天の1人である龐煖(ほうけん)。彼は最新刊まで読み終えた今も何となく腑に落ちなくて、それだけに気になる。終始理解しにくいキャラクターでした。

©原泰久/集英社
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