日本の事業会社:11年の見通し--格付けの安定化は続くが、改善の速度は不透明/その2・主要業界の見通し《ムーディーズの業界分析》

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 ムーディーズは11年の世界の自動車販売台数を、前年度比5%増で考えている。主要地域の予想販売台数(前年度比)は、米国12%増、中国9%増、ヨーロッパ1%減、日本10%減である。ムーディーズが各社ごとに設定している水準まで収益率が改善すると見込める発行体については、格付けに上方圧力がかかるだろう。

11年は、トヨタ自動車・ホンダ両社ともに新車モデルを投入予定であり、ガソリン価格の上昇により、日本メーカーが得意とする低燃費車の需要が増すと思われる。また、新興国市場に対しては、昨年度の日産自動車V-platformモデルに続き、トヨタ自動車、ホンダとも低価格商品を投入する予定である。自動車需要が新興国へ移行していることから、新興市場での事業は今後さらに重要となってくる。

財務面に関しては、金融市場の回復と収益改善により、バランスシートの改善が10年度に見られた。11年も引き続き収益の改善が見られるだろう。反対に、為替変動は引き続き主要なリスク要因である。ドル円相場が1ドル=80円前後よりさらに円高へと進むならば、収益改善を妨げる可能性がある、とムーディーズは考えている。

家電業界
 家電業界の業界見通しは、09年11月にネガティブから安定的に変更して以降、安定的のままとなっている。同業界に対する見通しをポジティブに変更せず、安定的のままとしているのは、その後、市場環境の大幅な改善が見られていないためである。

足元では、主に新興国市場における需要拡大を背景に、家電製品に対する需要は全般的に回復している。しかしながら、米国および欧州市場の状況は引き続き低調である。また、薄型テレビや薄型ディスプレーパネルなどの主要製品において過剰供給が生じ、価格下落が続いているうえ、アジアメーカー等との厳しい競争や円高も続いている。それらに加え、日本政府による家電エコポイント制度が11年3月に終了することもあり、来期以降、国内需要は大幅に低下することが見込まれる。

しかしながら、ムーディーズは、格付け対象となっている日本の家電メーカーについては、コスト構造の改善が進んでいることもあり、今後も全体としては収益の回復が続くものと予想している。世界的な金融危機に伴う需要の急減な低下に対応するため、各社は過去1~2年の間に、収益性が低下したデジタルAV事業を中心に構造改革を実施した。また、白モノ家電やデジタルイメージング事業(デジタルカメラ、カムコーダー)などの競争力のある事業から安定的な収益を確保している。このため、営業キャッシュフローは緩やかながらも改善していくであろう。一方で、各社は設備投資を基本的に抑制する傾向にあるため、中期的に財務内容も改善していくであろう。

ただし、収益性を改善、安定化し、財務内容を早期に回復できる見通しが立たなくなった場合には、格付けは下方向の圧力を受けるであろう。

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