日本の事業会社:11年の見通し--格付けの安定化は続くが、改善の速度は不透明/その2・主要業界の見通し《ムーディーズの業界分析》

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 新造船の供給により、供給過剰状態は続く可能性がある。しかし、荷動きの増加に加え、廃船、返船、係船、減速航海など船隊の合理化を進めることによって、今後も需給インバランスはある程度吸収されるであろう。ゆえに、ムーディーズは、日本の海運会社の需給バランスへの対応力は向上しつつあると見ている。

ムーディーズは、商船三井(MOL、A3)と日本郵船(NYK、Baa1)に格付けをしている。収益力の回復に伴い、財務内容の改善が期待されるとのムーディーズの見方を反映し、両社の格付けの見通しは、10年11月にネガティブから安定的に変更された。

世界経済の回復と新興国の成長を背景に、海運輸送物量が戻りつつあること、合理化とコスト削減を進めたこと、消席率(スペース使用率)の上昇によりコンテナ船事業の運賃が改善したことなどにより、両社の全般的な収益力は改善傾向にある。しかし、ムーディーズは、収益の回復の一翼を担ったコンテナ船事業は、長期契約がなく運賃市況や荷動きの変動の影響を受けやすいため、その事業リスクは依然として高いと見ている。

ムーディーズは、両社の高い財務レバレッジを懸念している。世界的な経済危機の後、両社は船隊増強計画を見直したものの、旺盛な船隊需要に対応するために過去に積極的な設備投資を行ってきた結果、財務レバレッジは上昇した。ムーディーズは、両社の資本構成と財務レバレッジの改善は、収益とキャッシュフローの安定性の高まりにより、今後緩やかなペースで進むと見ている。

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