日本の事業会社:11年の見通し--格付けの安定化は続くが、改善の速度は不透明/その2・主要業界の見通し《ムーディーズの業界分析》


総合化学業界
 日本の総合化学業界の営業利益は、11年も引き続き回復するとムーディーは見ているが、その回復速度は11年3月期に比べると緩やかなものになるであろう。増加傾向にあるポリオレフィン製品への需要により、高い稼働率を維持するエチレン設備に加え、スペシャリティ製品に対する安定した需要もあり、これらが収益回復に貢献している。情報電子材料の中には、需要の減少が見られるものもあるが、これら製品も11年には回復するであろう。

一方で、国内需要の中期的な減少とアジア・中東における新増設により、国内エチレン設備は過剰生産能力という問題にいまだ直面している。多くのエチレン設備プロジェクトがすでに稼働を開始しているため、各社が事業提携やM&Aなどの戦略的アクションをいかにタイムリーに実施していき、ポジティブな結果を出していくことができるのか、今後の重要な点である。

さらに、各社は過去2年にわたりコスト構造の強化に注力してきたため、今後は長期的な成長の確保に重点が置かれ、設備投資も増加するであろう。特に、日本以外の企業とのM&Aや事業提携を含む戦略的アクションも増加すると思われる。したがって、フリーキャッシュフローは限定的になり、EBITDAマージン、有利子負債対EBITDA倍率、リテインドキャッシュフロー(RCF)対有利子負債などの財務指標が、格付けにとってより重要となってくる。

日本の総合化学メーカー2社(住友化学:A3、三井化学:Baa2)の格付けの見通しは、それぞれネガティブと安定的である。これは各社が現在実施している将来の成長確保のための事業戦略の結果、財務基盤に生じるであろう影響の差異に起因する。

住友化学の場合、同社の財務基盤への負担がラービグ計画*1を含む一連の戦略的アクションにより増加したため、既存事業および戦略的アクションからの収益回復が最も重要である。11年の収益回復が緩やかなものとなり、有利子負債対EBITDA倍率、RCF対有利子負債などのレバレッジ関連指標の改善が遅れると見込まれる場合、格付けに下方圧力がかかるであろう。

鉄鋼業界
 日本の鉄鋼業界のアウトルックは、他のセクターほど芳しくはない。中国、インド、東南アジア等新興国の堅調な需要は、直接的、間接的な輸出の伸びを通じて、日本の鉄鋼業界にとって引き続きポジティブな要因となろう。生産調整やコスト削減とともに、このような需要の伸びによって、日本の鉄鋼メーカーは財務レバレッジを下げることができ、また収益性は、金融危機以前のレベルにまでは回復していないものの、改善させることができた。

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*1 住友化学とサウジアラビアン・オイル・カンパニー(サウジ・アラムコ社)と折半出資での合弁会社、ラービグ・リファイニング・アンド・ペトロケミカル・カンパニー(ペトロ・ラービグ社)を通じ、石油精製と石油化学との複合コンプレックスを運営するプロジェクト。

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