「警察裏金」実名告発の幹部が私に教えてくれた事 組織不正を前にどう動くか、原田宏二氏逝く

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社会の不正・不作為が内部告発によって明らかになるケースは、しばしばある。しかし、告発者を組織の裏切り者呼ばわりし、村八分にする文化は消えない。原田氏も激しいバッシングを浴びた。

在りし日の原田氏(筆者撮影)

それを十分に予測したうえで、原田氏は堂々と顔と名前をさらして報道陣の前に進み出て、カメラの向こうにいる道民に向かって真実を語った。その勇気は並大抵のものではなかっただろう。

組織内で何か問題が起きた際、多くの人は首をすくめて嵐が過ぎ去るのを待つか、火の粉が降りかからぬよう逃げ回るか、あるいは改善に動こうとする人を批難する側に回る。組織人としての人生は、表面上、それでまっとうできるだろう。

道警を退職した後だったとはいえ、原田氏は実名告発に際し、天下り先だった保険会社を辞め、OB組織・北海道警友会からも脱退した。いわば、組織との関係をすべて断ち切って、1人で会見に臨んだのである。

正しい警察のあり方を求めて活動を続けた

組織の不正や悪弊を知ったら、あなたはどうするだろうか? 上司の不正を目の当たりにした際はどうだろうか? 原田氏の実名会見は、そういったことを社会の1人ひとりに問いかけていたのだと思う。

「退職後にいい格好をするな」「もらった裏金を返してから会見をしろ」といった罵声を浴びながら、原田氏は会見後も正しい警察のあり方を求めて活動を続けた。そんな警察幹部は「元」を含めても誰もいなかった。ほかの官僚機構でも、原田氏のような人物はめったにお目にかかれない。

「ヒーロー扱いするなよ」と叱られそうだが、筆者の中では紛れもなく、不世出の正義漢だった。

高田昌幸=フロントラインプレス(Frontline Press)所属

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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