「警察裏金」実名告発の幹部が私に教えてくれた事 組織不正を前にどう動くか、原田宏二氏逝く

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北海道警察の裏金問題が発覚した2003年11月当時、筆者は地元紙・北海道新聞のデスクとして、裏金取材チームで指揮をとる立場にあった。警察関係者の証言などをベースに文字どおり連日報道を続けたが、道警側は「裏金は存在しない」との立場を崩さない。

そこに登場したのが、2004年2月の原田証言である。これがきっかけとなって、北海道警察(道警)は組織的裏金づくりを全国で初めて認めざるをえなくなり、道警本部長は北海道議会で謝罪した。

最終的には、使徒不明金約3億9000万円を含む約9億6000万円を国と北海道に返還し、関係した計3235人の警察官・職員が処分される事態になった。当時の道警職員は1万人あまりだったから、その規模の大きさがイメージできよう。

懲戒処分は98人(停職1人、減給86人、戒告11人)、所属長訓戒など内規に基づく処分が本部長ら137人、口頭注意が2750人だった。このほか、会計文書を保存期限内に廃棄したとして、副署長ら文書管理責任者計32人が処分されている。刑事訴追された者が1人もいなかったものの、日本警察始まって以来の大量処分であり、裏金問題は全国各地に飛び火していく。

そのきっかけが原田証言である。「実名・顔出し」という稀有な告発会見だった。

末端の者に悪弊の責任を取らせるのは筋違い

では、なぜ、原田氏は実名告発に至ったのか。20年近くになる付き合いの中で、原田氏はしばしば、こんなことを語っていた。

「慣習として組織に染みついた悪弊は、その組織を生き抜き、職責が上になった者は熟知している。悪弊をつくった責任はないにしても、それを見過ごしてきた責任がある。そういった組織の中で末端の者に悪弊の責任を取らせるのは筋違いだし、酷ではないか。責任は上の者、組織のトップが背負うべきだ」

その言葉のとおり、原田氏は2005年2月、突然開いた記者会見の席上、マスコミ各社を前にして「自分が警察官になった昭和30年代から裏金は存在していた」と明言し、幹部になってからは会計検査院の検査をごまかすために警察組織を挙げて対応していた実態を赤裸々に語った。そのうえで、こう言っている。

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