「警察裏金」実名告発の幹部が私に教えてくれた事 組織不正を前にどう動くか、原田宏二氏逝く

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実は「きちんとした形で問題提起」できなかったものの、原田氏は道警の釧路方面本部長時代、裏金問題をなんとかしたいと部下の幹部に向かって一度だけ水を向けたことがあるという。

「そしたら、『本部長、本気ですか』と。いくら本部長だからと言っても、一幹部だけで対処できる問題ではないし、そんなことしたら組織はガタガタになる、と。だから、めったなことではそんなことを口にするものではありません、と言うんだよ」

組織的裏金づくりは、組織を挙げての違法行為だ。捜査協力者に渡してもいない捜査費を協力者に渡したことにするため、会計書類を偽造し、架空の協力者や事件を書類上で作り上げる。出張もしていないのに、捜査で出張したことにする。そんな行為を山ほど積み重ねた。

捜査費、旅費など数多の費目が偽造書類によって警察組織内でマネーロンダリングされ、幹部へのヤミ手当や飲食費などに化けた。公文書偽造・同行使、詐欺、横領。罪状はいくつも思い浮かぶ。しかも、ほぼすべての警察官が関わっていた事案である。議会での追及が始まると、会計書類は“誤って”次々と廃棄された。

「組織にまとわりついた、骨絡みの犯罪」と表現した人がいた。その根深さをわかっていたからこそ、現職時代、自ら積極的に動くことができなかったのだろう。

世論という“外圧”を使って、改革に道筋

「警視長」といっても、原田氏は道警採用のいわゆるノンキャリだ。警察庁採用のキャリア組が牛耳るピラミッド組織においては多勢に無勢。裏金システム廃止という正論を打ち出しても、組織の中では疎んじられて終わったに違いない。

だから退職後に裏金追及の報道が始まり、道民が一斉に注視したタイミングこそが大きなチャンスだった。世論という“外圧”を使って、改革に道筋をつけるのだ。

かつての実名・顔出しの記者会見で、原田氏はこう言っている。

「それなりの立場にいた者が真実を話すべきときがきたと判断しました。皆さんからは、その無責任さを指摘されるでしょう。昔の仲間からも裏切り者とのそしりを受けるでしょう。ずいぶん、ちゅうちょもしましたが、どんどん道警の信頼が失われていくなかで、現場の警察官やその家族の人はさぞ、肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。1日も早く現場の警察官が誇りを持って仕事ができるようになってもらいたいと思うのです。今回が、道警が更生できる最後のチャンスだと思います」

原田氏のもとに届いた誹謗中傷の手紙の数々。ほとんどが警察関係者からのものと思われた(筆者撮影)
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