ジャック・アタリ 経済学者、元欧州復興開発銀行総裁--日本は無策のままならば5年以内に財政破綻する
世界規模の経済・金融危機を予見した元欧州復興開発銀行総裁のジャック・アタリ氏。昨年10月には自らが委員長を務めるサルコジ仏大統領の諮問委員会「アタリ委員会」で、フランスの財政再建戦略をまとめた報告書を公表。今年1月の来日時には菅直人首相と会談するなど、同氏の発言に世界が高い関心を寄せる。知日派の同氏が語る日本の債務問題解決の処方箋とは。
──先進国は経済・金融危機に財政出動などで対処した結果、公的債務が膨大な水準に膨らみました。
今起きているのは人類がこれまでも頻繁に経験してきたことです。公的債務は、上手に管理しないと悲惨な状況を生み出してしまいます。
なぜ、このような状況に至ったのか。それは民主主義に政治的な勇気がないからです。問題に直面した場合、支出を増大させて税金を下げることはできても、その逆のことはなかなかできません。
民主主義国家において、次世代はまだ投票権を得ていない。たとえば政治家の行動を見ても、老人ホームなどを訪問する人はいても、若い人たちがいるような場所や保育園などには、あまり足を運びませんね。
今回の危機が起きたことで、各国の政府はパニック状態に陥り、銀行の失敗を自分たちで負担しようという決定を即座に下しました。つまり、銀行で現在働いている人たちがもらっているボーナスは、次世代の納税者の糧となるもの。政府の判断は本来、許しがたいことです。
──日本の経済・財政の現状をどう見ますか。
日本は約20年前に危機へ突入しました。現在の状況は他国よりも深刻です。というのは、危機が常態化し、より悪化しているからです。
日本は勇気を持って対処すれば、危機を解決できたはず。だが、そうすることができなかった。カナダとスウェーデンも、日本と同時期に危機に見舞われましたが、両国は見事に脱出しました。カナダは歳出を大幅に削減。スウェーデンは困難な状況にある銀行を国有化し、増税にも踏み切りました。今は両国とも危機に瀕してはいません。