ジャック・アタリ 経済学者、元欧州復興開発銀行総裁--日本は無策のままならば5年以内に財政破綻する

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 それを食い止めるにはさまざまな選択肢があります。外国人受け入れを推し進めずに人口を増加させようというのも一つです。実際、フランスはそうしています。だが、それではコストが高くついてしまう。

日本人の外国人に対する態度にはよく理解できない面があります。「日本は島国だから閉鎖的だ」という説明がなされますが、はたしてそうでしょうか。英国も島国ですが、対外的にオープンであり続けました。シンガポール、豪州もしかり。

「日本の文化は外国の力をまったく借りずに発展してきた」という指摘もありますが、これも見当外れです。仏教はインドや中国などから持ち込まれたもの。それなくして文化は成り立たなかったはずです。

つまり、日本が他国に対して閉ざされた国などというのは最近の傾向です。韓国も閉鎖的でしたが、今では変わりつつあります。「畑仕事の人手が10万人足りないから、タイ人を流入させよう」といった政策は論外ですが、オープンであり続けたいという政治的な意志は必要です。実際、日本人は外国の映画を好み、異文化を好んでいるでしょう。それなのに外国の人々を受け入れたくないというのは間違った考えです。

--食糧価格高騰などを理由にアルジェリアで起きた暴動がチュニジア、そしてエジプトへも飛び火しました。「食糧危機」をもたらす一因とされる投機資金をむしろ、貧困に直面する新興国へ還流させるような仕組みが必要ではないでしょうか。

まさにそのとおりです。私が現在率いている、貧困層向け小規模金融(マイクロファイナンス)の普及活動などを手掛ける非政府組織(NGO)も、農産物や食料品価格の安定化に努めようと取り組んでいます。

その一環として、国連食糧農業機関(FAO)や大手保険会社などの支援の下、収穫に対する保険システムの開発を進めています。今のところ、アフリカ諸国で実用化を視野に入れており、近いうちにそのメカニズムを公表できると見ています。

しかし、それによって投機的な取引を止めることはできない。国際レベルで一次産品への投機に対する監視が必要でしょう。リスクをヘッジすることなしに資金を振り向ける、といった行動を禁止する必要があります。現実(の需給関係など)から大きく乖離した動きは、認められるべきではありません。

聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、松崎泰弘 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年2月11日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Jacques Attali
1943年アルジェリア生まれのフランス人。仏国立行政学院(ENA)卒。ミッテラン政権時代の大統領特別補佐官、欧州復興開発銀行初代総裁など歴任。政治・経済界で重責を担う一方、経済学者や作家としても活躍。

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