悪い金利上昇リスクと日本破綻のシナリオ
大手格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が1月27日、日本のソブリン格付けをAAからAAマイナス(見通しは安定的)に引き下げた。S&Pの小川隆平ディレクターは、「財政赤字が高止まりし、財政の柔軟性が低下している」と指摘。菅直人首相は6月までに消費税率引き上げを含む税と社会保障制度の見直し案を提示するとしているが、「そうした改革案を実現しようとしても決議される可能性は低いと見ている」(同氏)。経済が低成長であるのも格下げの一因だ。
一方、同じAA評価で見直し対象となっていたスペインのソブリン格付け。見通しはネガティブであるものの、AAで据え置かれた。財政健全化と構造改革への取り組みが評価された。
格下げでも買われる日本国債の不思議
信用不安で高利回りとなっているスペインより低い格付けとなっても、日本の長期金利(10年物国債利回り)は、一時わずかに上昇したのみで、その後はむしろ低下している。
民間部門の1000兆円に上る貯蓄が、900兆円の国・地方の負債を賄っている日本。財政悪化は先進国中断トツでも(上図)、海外投資家からリスクプレミアムを要求されることがない。国債の95%を保有する日本の機関投資家にとって格付けは、まだ重要な材料でないのが実情だ。銀行には貸出需要がないのに、預金は増え続けている。銀行の規制監督上、信用リスクがゼロ評価の国債は、銀行にとって主な投資対象とならざるをえない。長期金利は米国の長期金利上昇に引きずられて昨年秋以降は反転上昇しているが、それまでは下落局面が長く続いてきた(次ページ図)。むしろ、若干の金利上昇(債券価格は下落)は絶好の買い場と見なされている。