つまりは、「ないものを買わなければ料理ができない」と考えるのか、「あるものでなんとかするのが料理」と考えるのか。
この差は実に大きいと私は思う。前者のように考えてしまうと、永遠に食材を買い続け永遠に腐らせるという魔のサイクルから抜け出すことはできないのは冷静に考えれば当然のことである。
あ、念のために言っておくが、レシピ本(ネットや雑誌の情報を含む)そのものが悪と言いたいわけではない。料理と言うものを学ぶうえで、レシピを見てあれこれと作ることはオンザジョブトレーニングであり、習うより慣れろ。私もそうやってさまざまなレシピに学び、料理というものが楽しくできる人間になった。感謝感激雨あられである。
「レシピを見ること=料理すること」ではない
でも問題なのは、レシピに頼るあまり、ふと気づけば「レシピを見ること=料理すること」と考えるようになってしまうことだ。レシピ本を見なければ料理なんてできないと思い込んでしまうことだ。
そう、それはかつての私自身である。レシピ本を見なくても作れたのはキムチ炒めとカレーと豚汁くらいで、それも「おいしく」作ろうと思えばやはりレシピ本どおりに作らねばダメであると決めつけていた。で、実際、レシピどおりに「一味違う絶品カレー」など作れば、確かに一味違う絶品な味がするのだった。ってことで、料理上手になるにはやっぱりレシピ本が欠かせないよねと心の底から信じていた。
でもね、実際本に頼らず自力で作ってみたら、これがもうまったく拍子抜けするくらい普通にイケたのである。
もちろんレシピ本に載ってるみたいな絶品料理が作れるわけじゃない。っていうか、そもそも味噌汁と漬物しか作っとらん。でもそれで、われながら驚いたことに何の不満もないのである。フツーに美味しければ十分であった。っていうか、味噌汁も漬物もそもそも「絶品」とかっていうジャンルはない。毎日食べるものって、普通に落ち着くやつが結局は一番ウマイ。普通であることにこそ価値があるのである。
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