ボクたちが絶対薦める「6冊の岩波文庫」 IIJ鈴木幸一×クレディセゾン林野宏
林野:29カ国語は話せたっていうじゃないですか。『イスラーム文化』みたいな名著はなかなか凡人には書けませんよ。イスラム教の知識は、これから何をするにも重要になってくる。
――ネットの時代、本はどうなっていくと思いますか?
鈴木:僕はインターネットの商売をしているけれど、本だけは残って欲しいと思ってるんだ。インターネットのインフォメーションに楽しみはなくて、本当の楽しみは、本をめくるところにあると思う。本を持っていることが「今ふう」ということになればいいんじゃないかな。
日本に求められるソフトなイノベーション
林野:最近の若い人は、本を読まなくなったって言われてますけど、僕は、いまの20代、30代の危機感はすごいと思うよ。今ぐらい「勉強しないと将来はない」って感じている若い世代は、かつていなかったんじゃないかな。日経新聞のアンケートでもそんな結果が出ていましたよね。
鈴木:だからって、ハウツーものはどうかと思うけど。
林野:それでも読まないよりはいいと、思いますよ。自分のことは自分できちんとしないとダメ。若い人たちは、会社や国、社会なんかには頼れないと知っている。グロービス(経営大学院)もずっと満席だっていうじゃないですか。
この衰退期の日本において、危険の中から抜けよう、抜け出したいと思っているからですよ。こういった状況に古典がうまく投げこまれれば、シェアが広がると思いますよ。食べようとしていない魚にいくら餌を投げたって釣れないけれど、欲しがっているときには釣れる。今、そうなっているんじゃないかな。
――『もしドラ』も大ヒットしましたよね。
林野:今の時代は働くうえで、イノベーションが求められている。新商品よりもイノベーションですよ。日本語にすると、「革新」のうえに「技術」がついてしまうけれど。イノベーションはなにも理工系の専売特許ってわけじゃないと思う。技術にかぎることじゃなく、いまやどこにでも起こりうる。お客さんと接しているなかからも生まれるしね。
鈴木:林野さんに反対しちゃうことになるけれど、やっぱりイノベーションっていうのは技術だと思いますよ。鉄道なんかがそうじゃないですか。ずっと横ばいだった生産量を18世紀から突然跳ね上げることができたのは、新しい技術のおかげだと思います。やっぱり過去には、技術の革新というものが必要だったんですよ。
林野:そうかもしれません。でもいまは、その技術革新の上にのって新しいイノベーションが必要とされていると感じるんです。私はカード業界でイノベータ―なんて呼ばれているけれど、それはスーパーでクレジットカードにサインしないで利用できるようにしちゃったとか、ポイントは永久に消えないようにしちゃったとか、そのぐらいなんです。それはなにも技術ではない。ポイントに期限があると、消えたポイントの分のお客様の損害が、そのまま企業の利益になります。そんなシステムはおかしい、っていう気づきがもとになっているんです。
鈴木:なるほど。インターネットは20世紀最後のイノベーションと呼ばれているけれど、その技術革新によるイノベーションをどうやって利用していくか、発展させていくか、ということが日本では規制などの問題で難しい。日本は、イノベーションを産業のエンジンにすることが下手だと思いますね。そういう点では、ソフトなイノベーションがいま求められているということでしょう。
林野:私はソフトなイノベーションを生むには、感性の磨きあげが必要不可欠だと感じています。
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