ボクたちが絶対薦める「6冊の岩波文庫」 IIJ鈴木幸一×クレディセゾン林野宏
鈴木:僕は、「ながら」ができないから、机に座って読んでいるね。でも最近、1000ページを超える本を読まなくなってきたから、あえて書評を引き受けて読むようにしているんです。飛行機のなかで読むことが多いけど。
――お二人が薦めておられる本について、どのようにご覧になりましたか?
鈴木:林野さんが薦めている『ファーブル昆虫記』なんて、僕は子ども用のファーブルしか読んだことないから、驚いた。
子どもに読ませたい『ファーブル』『元朝秘史』『アインシュタイン』
林野:絵本でもなんでもいいから、子どもの頃に手にしておけば、大人になって読んでみようと思う。「ファーブルって人は昆虫のことだけ観察と研究をしていて、歴史に名を残した」って。子どもには絶対読ませなきゃ。
鈴木:なるほどね、そういう考え方があるんだ。僕の息子も小さいころ、子ども用の全集となったファーブルは読んでたな。そういえば、僕が子どものころ、横浜の本屋で山ほど本を買ってもらった。本だけは無尽蔵にお小遣いをもらえたんだよね。だから、わかりもしない本を背伸びしてたくさん買った。
林野:私は、子どもたちに家族カードを渡して、本だけは自由に買っていいって言ってあるんですよ。
鈴木:年を取ってから初めて古典を読むのは大変だと思うね。若いうちに読んでおくと、あとから読み返した時に理解が深まって、人生の愉しみを味わえると思うんだ。僕は、岩波文庫のスタンダールの『赤と黒』が好きで読んでたんだけど、20年ぐらいたってから読み返したら、「これは喜劇だ」と思った。時間が経って、読み方が変わる。面白いよね、こういうのって。
だからこそ、若いうちに読んでおいてほしい。古典というのは入り口は難しいけれど、やっぱり面白い。面白いからこそ残っているんだから。その面白さを味わうことが、人生の深みを増すことにつながると思うんですよ。インターネットでたくさん情報を見ても、それはその日のうちに終わっちゃうものなんです。あんまりこれをいうと商売に関わるので、やめますけど(笑)。
林野:そのためには、食わず嫌いをしない、ということが大事だと思いますね。本を読む、ということを子どもが好きになる仕掛けを、教育の中で行なっていかなければならないんじゃないかと思う。今の学校って、通っているうちに嫌いな科目がどんどん増えていくじゃないですか? 点数で優劣をつけられて。教育っていうのは「何が得意で、何が好きか」を明らかにするためにあるべきだと思うんですよ。
鈴木:まったくその通りだと思う。僕は楽しいから本を読んでいるけど、子どもたちにどうやってそれを教えるのか、が大切だよ。
林野:だから私は、小学生にはファーブルだと思った。中学生には『元朝秘史』。チンギス・ハンのようなすごい人物がいたんだってね。高校生になったらアインシュタイン。子どもの頃親しんだお話が文庫にあるんだって気づけば、手に取りやすいかなと。
鈴木:林野さんが推薦している『元朝秘史』、これはとてもいい本だよね。僕も一度なにかの書評で取り上げましたよ。チンギス・ハンは今の通信システムと国境の基を作り上げた人物ですよね。林野さんが『元朝秘史』を挙げているのは意外だった。今のお仕事とあまり関係がない分野のように思えたから。それに、この本を実際に読んだという人には、あまりお目にかかったことがないので。
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