ボクたちが絶対薦める「6冊の岩波文庫」 IIJ鈴木幸一×クレディセゾン林野宏

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林野宏(りんのひろし)クレディセゾン社長。1942年京都府生まれ。西武百貨店や西武クレジット(いずれも当時)を経て2000年から現職。

林野:まずタイトルがかっこいいじゃないですか! 『元朝秘史』だなんて、読みたくなんないほうがおかしい、と思うぐらいですよ。私は、人類史上最大のリーダーは誰かって考えたときに、これはやっぱりチンギス・ハンを超える人物はいないんじゃないかと思うんです。リーダーシップという点ではチンギス・ハンに並ぶ人はいないですよ。あの行動半径はすごいですよ、当時は馬での移動ですからね。

鈴木:ほかにいないでしょうね。あの時代の国境や通信システムが後々にも大きく影響していますね。通信や広告、という意味ではチンギス・ハンは天才だと思う。本を読んでいくと、支配する国の残虐さとすさまじさを感じる。

2、3年前に読んだモンゴルの本、『パックス・モンゴリカ――チンギス・ハンがつくった新世界』もすばらしい本だった。文庫本にならないのが惜しいな。『元朝秘史』をベースに書いているんだけど。チンギス・ハンは、今の北朝鮮の地域に紙産業が豊かだったことを活かして、バグダッドを攻める際、大量にビラをまく。そのビラに書かれた内容におののいたバグダッドの軍は、戦わずにあきらめちゃうんですよ。当時の早馬を使った通信技術は、本当にすごいね。

林野:その点、今の日本にはモデルとなるリーダーシップを発揮できる人がいないと思うんです。

鈴木:僕は、ここ20年、日本は「気楽な衰退期」に入っているんじゃないかと思うんです。いまの日本って本当に食べるのに困っているわけじゃないでしょ。みんなで頑張ろうっていう意味がないんだよ。過去の遺産で食っていけるし、草食系になっていくし。
林野:今の日本は働かなくても食っていけるまれなる国ですね。これからが大変でしょうけど。

鈴木:ひとりあたりのGDPは実は下がってない。人口も減っているから。無理してサービスなんかする必要がないんだ。

幅広い知識が身につく『イスラーム文化』

林野:私なんかは政治に経済のことを頼むのは無理だと思うんです。政治家は経済のことはなんにも知らないんだから。やったことのない人に「第三の矢」だとかなんとかわかるはずがない。基本的に間違っているんです。自立した経済人としては、あんなのは政治に任せるのはおかしいと感じるね。

私は、鈴木さんの選書を見て、やっぱりさすがだと感じましたね。視野が広いというか、私とはタイプが違う選書だなと。でもそのなかでもいちばん共感したのが、井筒俊彦さんの『イスラーム文化』! あれは本当に名著だね。

鈴木:実は、井筒さんには一度だけお目にかかったことがあるんです。あの人は、本当に大碩学だね。日本人であんな知性を持ち合わせた人は、ほかにいないよ。僕が好きなロシア文学にも造けいが深い人でね。

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