人にスルーされる言葉と心に残る言葉の決定的差 「論理的に説明する能力」以外に重要な事がある

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伝え方が抜群にうまい人に共通する決定的な要素とは?(写真:tomcat/PIXTA)
プレゼンが苦手、考えをうまく伝えられない、上司やパートナーを説得したい……そんな「伝え方」に関する悩みは、現代だけでなく、古代から人々を悩ませる切実な問題でした。「最も偉大な雄弁家」といわれる古代ローマの弁護士・キケロは、「論理的な証明は、訓練を積めば誰でもそれなりにできるようになるが、人の心を動かすには論理だけでなく話し手の人柄や、相手の感情に訴える要素も大切だ」と説きました。
説得力を武器に、一時期は古代ローマでカエサルと肩を並べるほどの影響力を持ったキケロ。そんなキケロが現代に残した、技術を超えた「伝え方の本質」とは? 現代を生きる私たちにも役に立つその哲学を、『古代ローマ最強の弁護士キケロが教える 心を動かす話し方』より、一部を抜粋してお届けします。
前回:説得がヘタな人と難なく納得させる人の決定的差(4月12日配信)

知性を持たない雄弁さには意味がない

言葉で人の心を動かすことのできる能力が頼もしい武器となることは、すでに述べた通りである。しかしその武器は、善意で使われることもあれば、悪用される危険もはらんだ諸刃の剣である。
このことは、第2次世界大戦という同じ戦いの舞台に立ち、ともに卓越した演説力を誇った20世紀の2人の政治家、ウィンストン・チャーチルとアドルフ・ヒトラーの例を考えてみれば明らかだろう。
こうした歴史的背景をふまえてみると、現代において「弁論術(レトリック)」という言葉が否定的に受け取られやすい理由も、容易に理解できる。
古代ギリシアでは、物事はすべて相対的であるという前提にもとづいた「議論のための弁論術」が生まれ、職業として弁論術を教える教師(ソフィスト)があらわれた。
彼らは、相対的な考え方に重きを置き、「純粋な論理性」「絶対的な真実の追究」といった、実際的ではない議論を敬遠した。
こうした職業弁論家は、言葉の持つ力を盛んに褒め称え、物事を実物以上に良いものに見せるため、巧みに言葉を操ることもあった。
それに対して、ソクラテスやプラトンといった哲学者たちは、問答法を通じて得られる真実にこそ価値があると考え、絶対的な真理を追い求めた。
こうしていわゆる弁論術と哲学の対立が生まれたわけだが、この対立関係は、姿を変えながら繰り返し表面化し、時には激化しながらキケロの時代まで伝わった。
キケロは『着想論』の冒頭で、弁論術の功罪について次のように述べている。
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