経済危機で低迷のODA 国際連帯税導入が急務に--国連事務総長特別顧問、UNITAID理事長 フィリップ・ドスト=ブラジ

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--国際連帯税の選択肢の一つとして、すべての金融取引を対象にする金融取引税(トービン税)も検討されています。経済学者の間では、各国一斉に課税しないと、課税をしていない国におカネが逃げるといった懐疑論もありますが……。

トービン税には実は二つある。一つは規制を目的とし、投機を規制するものだ。もう一つは国際連帯税の一環としての金融取引税で、非常に低い税率を非常に金額の大きい取引にかけることにより、途上国支援のための資金を創出するものだ。税率が非常に低いために、それが導入されても資金がタックスヘイブンなどに逃げる心配はまずないだろう。

--ドスト=ブラジさんは医師でもあります。医療の面で国際連帯税の仕組みがどのような効果を生み出せるのか、マラリアのほかにも具体例があったら教えてください。

航空券税で集めた資金で運用されているのがUNITAIDであり、WHO(世界保健機関)の中で活動している。UNITAIDが現在、支援対象としているのはマラリア、エイズ、結核という三つの感染症分野だ。現地で実際に支援をしている人たちとパートナーシップを組み、彼らのアドバイスを受けつつ、理事会が最終的に決定して運営している。

たとえば、エイズについては、子どもと妊婦への支援が中心だ。エイズにはこれまで子ども向け治療薬がなかった。先進国に子どものエイズ患者が非常に少なく、市場がないため製薬会社が開発してこなかったからだ。そこでUNITAIDが製薬会社に開発を依頼した結果、今やエイズの子ども10人のうち8人は治療を受けられるようになっている。

また、クリントン財団(クリントン元米国大統領が設立)による、途上国でさまざまな薬を配布するプロジェクトも支援している。エイズの妊婦から、生まれてくる子どもへの感染リスクを減らすため、「マザー・ベビー・パック」という特別なパッケージを作成。妊娠中に飲む薬と、出産時に飲む薬、産後に子どもと母親が飲む薬を一つのパッケージにし、それを服用することで、子どもへの感染リスクを従来の50%から5%以下に減らせるというものだ。

こうしたプロジェクトを毎年続けていけば、ボリュームメリットも出て、一般の価格よりかなり安い価格で薬を購入できる。途上国支援を続けるうえで国際連帯税が重要なのは、やはり毎年、継続的におカネが得られる点にある。

(聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、松崎泰弘 撮影:今井康一=週刊東洋経済2011年2月5日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Philippe Douste−Blazy
1953年仏オート=ピレネ県ルルド生まれ。トゥールーズの病院でのインターンを経て医師に。トゥールーズ大教授。政治家としても活動。1995年に文化相として初入閣。外相も務める。

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