フランス人が「寅さん」で学んだ日本の隠れた魅力 「男はつらいよ」には日本の美学が詰まっている

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私が初めて寅さんの映画を見たのは、日本に来て間もない頃で、テレビでやっていたのを覚えています。見た時間、寅さんというキャラクターに一目惚れしてしまいました。本当に自由人で、それにとても面白く、私の日本語のレベルでも、とても理解しやすかったのです。

さまざまな魅力が混在

私は彼の自立の仕方が好きです。私自身、自由と自立を何よりも大切にしています。また、私たちの名前が似ていることにも驚きました。ドラとトラ……。そして何より、寅さんは永遠の旅人(旅の達人)なのに惹かれます。彼はあの有名なスーツケースを持って、いつでも旅立つ準備ができています。

寅さんは心の拠り所である東京・柴又の家族のもとへしばしば戻りますが、彼は家族との時間を楽しむ達人でもあります。そして、1人でいること、独りでいることを心得ています。

時々おかしな失敗をしたり、変な行動をとったりしますが、どんな状況にも、どんな人にも、どんな場所にも順応することができます。しかし同時に、とても 「反体制的」です。彼は社会からはみ出した存在なのです。

寅さんは自由人であり、社会に対する反逆者のようなものです。一方、彼は「和」を愛し、調和が彼の基本であるようにも見えます。この矛盾によって、このキャラクターとこのシリーズはこれほど長く日本人に愛されたのではないでしょうか。

寅さんは思ったことをよく口にします。日本社会では、思ったことを口に出すことはあまり好まれません。「本音」と「建前」は、日本人の精神性の重要な部分です。自分が感じたこと、思ったことを素直に言ってはいけません。

また、寅さんはすぐに怒ります。怒ることで、何が問題なのかがはっきりとわかります。日本では、怒りを表に出すことは非常に稀で、あまりよく思われていません。かっとなることは悪いことだと考えられています。喧嘩やいさかいがあった後、再びコミュニケーションをとるのは難しいことが多いです。しかし、山田洋次監督は、「最近の日本人は十分に怒らない」と苦言を呈しました。

最も面白いのは、寅さんが子どもっぽくて、軽率で、ちょっとわがままなところです。彼はユーモアがあって、冗談好きで、笑い上戸で、不真面目で、いろいろなことを馬鹿にします。

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