フランス人が「寅さん」で学んだ日本の隠れた魅力 「男はつらいよ」には日本の美学が詰まっている

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柴又で「寅さん体験」をした筆者は大の寅さんファン(写真:筆者提供)

今年は寅年、そして寅さんの年です。それを記念してパリ日本文化会館(MCJP)では今年1月から『男はつらいよ』全50話を1年間にわたって上映しています。

このシリーズは、海外では完全な形で放送されたことがありません。フランスには日本映画(小津安二郎、黒澤明、大島渚など)の大ファン、かつ愛好家が多くいますが、実は寅さんはあまり知られていません。私はいつも、それをとても残念だと思っていました。

寅さんシリーズが大々的に紹介される意味

日本で誰もが知る本シリーズを大々的に海外、そしてフランスで紹介するのは初めてのこと。日本の生活や文化、心情、時代変遷をフランスの人々に伝えることに加え、日本ならではの人情やユーモアのあふれる作品たちは、新型コロナによって不安が拡大する社会を勇気づける一助となるはずです。

「1969年に始まり、2019年に終了したこの全シリーズを、素晴らしい画質の復元版で見ることができます。全50話であることを考えると、これは世界最長のシリーズです」。MCJPは今回のイベントをこう紹介しています。

1月から1年にわたって『男はつらいよ』を上映するMCJP(写真:筆者撮影)

今回、ついにMCJPで上映することについて、現館長である鈴木仁氏は、こう語ります。

「日本の国民的遺産ともいえるシリーズ作品や、伝説のヒーローが、多くのフランスの観客を魅了していることを本当に嬉しく思いますし、日本の地方の魅力を発見して、地方に行ってみたくなってもらえればと願っています」。現在のところ、約2500人の観客が訪れています。

3月に、MCJPで初めて1話を見た24歳のラファエルは、「雰囲気や背景は非常に日本的ですが、感情表現が強く、どんな人間でも同じことを感じられます(死、家族との関係など)」と語っています。寅さんの映画には、ある種の「普遍性」があります。ラファエルは、寅さんの性格が大好きで、「寅さんは、自分の思ったことをとても自由に言うので、多くの日本人の行動様式に反しているように見えます」との驚きを口にします。

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そして、日本文化の大ファンであり、この人気キャラクターを発見してとても喜んでいる別のフランス人は、こう話します。「自由、個性、個人の幸福が強調されています。また、寅さんは流れに身を任せるといった才能を持っています。彼には計画がありません」。

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