フランス人が「寅さん」で学んだ日本の隠れた魅力 「男はつらいよ」には日本の美学が詰まっている

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しかし、他の人のために時間を割くことができ、その人が誰であるかを知らなくても、自然に手助けをすることもできます(目の前にいる人の格に合わせて行動する日本社会とは大きく異なります)。例えば、第17話では、ホームレスのような人を助け、もてなしますが、その人が実は有名な画家だったというエピソードがあります。

寅さんを見ることで、私たちは、外見で人を判断しない方法を学びます。彼は人が好きで、出会いが好き。無計画の、特に偶然の出会いが好きなのです。この 「可用性」が、私は個人的にとても好きです。

日本人のどこが「好き」か

そんな寅さんを、人々は羨望のまなざしで見つめます。彼の自由さや、嫌な時に「嫌だ」と言う方法、あるいは、好きな時に好きな場所で好きな相手と好きなことをすることなど……。恋愛にはいつも不運な彼ですが。

日本のどこが好きかと聞かれたら、私はいつも、日本人の「心」と答えます。優しさ、忍耐力、他人への好奇心、尊敬、分かち合いが混在していることは、本当に類(たぐい)まれです。

寅さんは普通の日本人とはまったく違いますが、この「心」は他の国にはない特別なものだと思います。とても人間的で、子どもっぽくて、ある意味純粋で、少し単純なところもあります。

彼は自分自身の人生を生きています。 しかし同時に、彼は他の人々の世界をよりよくします。自分の時間とエネルギーを使って、人々を幸せにするのが好きなのです。人間味あふれる 「下町」の男です。MCJPを訪れたフランス人が言うように、「この映画では、幸せと悲しみを同時に体験することができる」のです。

「このシリーズは、頭よりも心のためのもの」と山田洋次監督は断言します。共に笑い、共に泣き、時に喧嘩をしながらも、彼らは必要な時に助け合います。 これは、家族とは何であるかを描いています。何があっても家族を、お互いを頼りにすることです。

このシリーズは、日本の地方を旅する方法としても素晴らしいです。特に、観光事業にとって厳しい時である今、日本の国境がいまだ外国人観光客に閉ざされていることを考えると、日本のさまざまな地域、風景、特産物の魅力を発見するのに完璧なアイデアです。

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