マクドナルドが高級路線?それは的外れだ 「グルメバーガーブーム」を追ってはいけない
加えてアクティビスト(物言う株主)の問題もある。マクドナルドは債務が少なくてキャッシュフローは大きい。したがって株の買戻しのような作戦を仕掛けられるかもしれない。予想EV/EBITDA倍率が低いこともあり、アクティビストが株価テコ入れを狙って乗り込んでくる恐れもある。
だが普通そういう手法が効果を発揮するのは、立て直し策を取っていない会社に対してだ。マクドナルドの場合は、決して落ち目でもないのに、すでにメニューの見直しに着手している。品目数を減らしたシンプルなメニューと、高品質の原料を採用するという作戦だ。つまりミレニアル世代の若者を中心に、消費者は質的に高い食品を望むという社会通念に対応している。
マクドナルド自身、まさに道端のバーガー屋として創業した会社なのだが、それが今ではシェイク・シャックやファイブ・ガイズを手本にしているということになるだろう。ただし全面的にではない。たとえば季節限定メニューで人気のマック・リブは生き残る。
「クイック・カジュアル」との違い
それにしてもマクドナルドは本当にこのような道を進んでいいのだろうか。
そもそもマクドナルドとシェイク・シャックは違う種類の存在だ。まずはマクドナルドのほうが価格水準が低い。客が1回に支払う金額は平均約5ドル。食のサイトのイーター(Eater.com)によると、米国内のシェイク・シャックではバーガーとポテトとシェイク合わせて13ドルだ。
業界分野として、マクドナルドはファストフード業界、シェイク・シャックはやはり景気のいいチポトルと同じで、クイック・カジュアル業界に分類されている(シェイク・シャック自身は「ファイン・カジュアル」という呼称を用いる)。
シェイク・シャックには、まさかマクドナルドのように店舗数を3万5000に拡大しようなどという野望はさらさらない。そこで大企業マクドナルドに出来ることはというと、消費者の好みの変化に合わせながら、安く済ませたいという客の願いにも応え続けることだろう。価格水準を上げてしまったら従来の客層には受けないはずだ。
次に、シェイク・シャックのIPOは憶測に支配されているということを肝に銘じたい。たとえば最近の例で言うと、ニューヨーク発祥で12店を構える食品スーパー、フェアウェイによる2013年のIPOでは、時価総額が8億2500万ドルに達した。これは破格に高い金額だったが、ニューヨークで高級食品スーパーとして驚異的な売上高を上げているのだから、きっと世界を制覇するだろうと見込まれたのだった。しかし現実にはそうは行かなかった。現在フェアウェイの株価は3ドルと、この1年間に83%も下落した。