金融政策を直ちに正常化、通貨価値を守るべきとき
物価が上がってきたのだから、そして、失業率は低いのだから、異次元の金融緩和は終了する、正常化を行うのである。金融引き締めではなく、正常化をまず実行するのである。それなら、景気が今後悪くなる恐れがあっても、妥当な政策となる。緩和は続けながら、持続的に緩和を行うために、緊急事態対応の緩和から、通常の緩和にする、まさに正常化するだから、問題ない。
そして、通貨価値を守るのである。円安を回避し、妥当な為替水準を取り戻すのである。これも、意図的に円高にするために介入をするのとはまったく異なる。異次元緩和により、アンバランスな円安になっているのだから、実体経済に基づく妥当な為替水準に戻るように誘導するだけである。
堂々と、為替も物価も実体経済のファンダメンタルズを反映した妥当な水準になるように「金融政策を正常化します」、と宣言すればよいのである。
ここで、唯一の理論的な問題は、為替のファンダメンタルズとは何か、という問題である。
中央銀行は為替を意図して金融政策を行うことはタブーである。実際には、新興国や途上国は通貨防衛のために利上げを行うことがほとんどだが、少なくとも成熟国では、金融政策は国内景気および国内物価のための政策である。したがって、中央銀行、とりわけ日本銀行が「為替はファンダメンタルズを反映した水準で安定することが望ましい」、と言うときのファンダメンタルズとは、国内景気と物価である。
しかし、実際の為替相場は、国際間の金利差で動いている。為替トレーダーだけでなく、すべてのエコノミストが為替のファンダメンタルズというときには、金利(金利差)のことを指している。経常収支、貿易収支もファンダメンタルズに含まれるが、それはゆっくりそして予想された方向に動くので、為替の変動はほぼすべて金利の変動で決まる。
ここに、為替のファンダメンタルズの金融政策の理想と現実の差があるのである。したがって、日本銀行は、堂々と、金利差により、実体経済(リアルセクター)のファンダメンタルズから金融市場の都合(金融市場のファンダメンタルズ)で大きな乖離が生じてしまっている。PPP(購買力平価)を反映した貿易収支、経常収支のためのファンダメンタルズに戻すためには、金利差によって生じたひずみを是正する方向に為替が戻ることは望ましいことだという立場は取れるはずである(明示的に誘導するのではないとしても)。
したがって、為替のひずみを是正することにも資する、異次元の金融緩和の正常化、普通の金融緩和への移行は、正々堂々と、かつ至急行うべきなのである。すべての経済主体、そして政治主体までもが望んでいることなのであるから、何の障害もないのであり、直ちに行うべきなのである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら