日銀は、為替暴落を放置してでも、自らの政策コミットメントを守らなくてはいけない。しかし、国民も政治家も、そして何より経済実態そのものが、それを望んではいない。そして、日銀は、それをわかっていながら、この矛盾を解決できず、むしろ、矛盾を拡大するような、為替暴落放置、もはや望ましくない国債金利コミットメント、イールドカーブコミットメントを死守しないといけないのである。将棋や囲碁、チェスなどのゲームで言えば「詰んだ状態」になってしまったのである。
デフレマインドに支配されているのは日銀だけ
この責任は、私は、メディア、そして有識者、エコノミストにあると思う。彼らは、日銀が物価目標2%を達成できないことをつねに責め立て、経済状況がどうであろうと、景気が過熱しようが、株式市場がバブルになろうが、2%が達成できないのだから追加緩和をしろ、と迫り続けた。
そして、最近では、失敗を認めろ、責任を取れ、と非難していた。この結果、まじめで誠実な日銀は身動きが取れなくなってしまい、出口に向かうことができなくなってしまったのである。
そのくせ、ここにきて、それらをすっかり忘れてしまったのか、「インフレをどうする、円安をどうする、アメリカは利上げしているのにしないのか」と、まさに180度手のひらを返して正反対の批判を行っているのである。
デフレマインドと戦っていた日銀は、いつの間にか、世の中からデフレという言葉は跡形もなく消え去り、日銀のコミットメント(約束)の中にだけ残ってしまったのである。
いまや、デフレマインドに支配されているのは、世の中で、日銀だけになってしまったのである。そして、もちろん、投資家、市場関係者も自己利益だけで、株価が上がればよい、国債トレード、日銀トレードで儲かればよい、ということだけで、意に沿わないときは日銀を批判し、売り浴びせ、催促相場を作った。哀れな日銀である。
しかし、哀れんでばかりいても仕方がない。日銀はどうすればよいか。
複雑な状況、困難な状況では、開き直って、基本に戻るしかない。これまでの経緯、体面、評判、反応、攻撃、それらをすべて無視して(穏やかに言えば、目をつぶって)、今の日本経済にとって正しいこと、やるべきこと、そして長期的にもっとも正しいこと、最重要なことを、基本に忠実にやるしかない。
それは何か。
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