今春のいわゆる賃上げは連合等の集計によると2%を少々上回るくらいであるらしい。「賃上げは、物価上昇に足りていない」という認識が多くの勤労者の実感だろう。
物価高に追いつかない賃上げ
一方、消費者物価は、今後対前年比で2%を超えることがほぼ確実だ。ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けたエネルギーや穀物の価格上昇は3カ月程度のタイムラグを伴って物価に影響してくる。生活関連の物価はまだまだ上がるはずだ。加えて、対前年比の数値的には昨春の携帯料金値下げの効果が剥落する。
こうした状況に対して、輸入物価の上昇につながる円安、その背景となっている日銀の金融緩和政策が不適切だとの近視眼的な批判がある。しかし、現在の日本経済全体には、円安のほうが円高よりもまだましだ。
エネルギーや小麦のような輸入せざるをえない財の価格高騰は、日本の消費者を窮乏化させていて、国内の需要の下押し圧力となる。資源などの一時的な輸入価格の上昇は、それが継続するのでなければ継続的なインフレ率の底上げ要因にはなりにくい(経済学部を卒業した読者は「予算制約式」について考えよ)。
コスト上昇で日本の経済は痛んでいる。金融緩和の継続とこれを後押しする財政赤字の拡張は、継続はもちろん、現在むしろ、より必要な状況なのだ。
黒田東彦総裁が率いる日銀の現在の金融政策は、評判は悪いが正しい。「利上げして、円高にせよ」は暴論だ。
しかし、岸田文雄首相の周囲には、「財政再建」に熱心だったり、「金利水準の正常化(≒引き上げ)」をやりたがったりしているような、乱暴にまとめると、「貧乏エリート」(古手の経済官僚や旧来型日銀マンなど)およびその追従者(学者やマスコミ)が少なくない。彼らは、自分たちの収入が固定的であるいっぽうで、民間人が羽振りよく儲かることを快く思わない歪んだ正義感を持っている。
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