ロシアのウクライナ侵攻は、どうやら長期化が避けられそうにない。ロシア軍は4月上旬、首都キーウ(キエフ)周辺からは撤退したが、ブチャなどの近郊都市における残虐行為が発覚した。その後もロシア軍が戦力を集中している東部戦線では、大規模な民間人の死傷者が出ている模様である。4月7日にブリュッセルで行われたG7外相会合は、戦争犯罪行為を厳しく非難するとともに、ウクライナ向けの人道支援と対ロシア経済制裁の強化方針を打ち出した。
ルーブル相場は「ほぼ元通り」に
ところが経済制裁は、かならずしも効果を上げていないようなのである。通貨ルーブルは2月24日の開戦と同時に、いったんは1ドル=70ルーブル台から120ルーブルくらいまで下落したのだが、4月に入った頃からほぼ元通りの水準に戻している。
ロシア中央銀行は、通貨防衛のために9.5%から一気に20%まで引き上げた政策金利を、4月11日からは17%に戻している。まるで余裕を見せられているようだが、「国内の民間業者が輸出によって得た外貨の80%を強制的にルーブルに転換させる」などの防衛策が一定の効果を上げているようだ。
その代わりと言っては何だが、ロシア国債は案の定デフォルト(債務不履行)になりそうだ。4月4日に償還と利払いの期限が来たドル建てロシア国債21億ドルを、ロシア中銀は「国内向けはルーブルで支払う」措置を取った。これは契約違反となるので、30日間の猶予期間を経て「一部デフォルト」と認定される公算が高い。ボクシングなどに例えれば「KO負けではないけれども、TKO認定」といったところだろうか。
ウラジーミル・プーチン大統領が、対ウクライナ勝利宣言を狙っていると言われている5月9日の対独戦勝記念日の直前に、ロシア国債がデフォルトになれば一定の心理的ショックを与えることはできよう。とはいえこのご時勢に、ロシア国債を買いたいという海外投資家はもとより多くはない。ロシアが新規に外貨建て国債を発行しても、買い手がつくとは思えないので、どの道、ほとんど影響はないということになる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら