ロシアへの経済制裁が期待したほど効かない理由 急落したルーブル相場は「ほぼ元通り」に回復

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戦争勃発後の当欄「ロシアへの『究極の制裁』で西側が浴びる『返り血』」(3月5日配信)で、筆者はこんなことを書いている。

今回の「金融制裁」は、金融が戦争という「悪」を止められるか、という問題である。武力を使わずに戦争を終わらせることができれば、こんなにすばらしいことはない。株安くらいは「御の字」であろう。……(中略)……金融には何ができて何ができないのか。これから先、壮大な実験の行方を祈る思いで見ていくほかはない。

それから1カ月半が経過した。確かに株安は進んだけれども恐れていたほどではなく、逆に制裁のほうもたいしたことはなかった。とりあえず、「ロシアの戦争継続をすぐさま止めるほどの経済的手段はない」というのが現時点の結論となる。

「脱ロシア」は口で言うほど簡単ではない

金融制裁が思ったほど効果を上げていないのであれば、次なる焦点はロシアからのエネルギー輸入の制限ということになる。ロシア経済の輸出依存度はなんと3割近くもある。なおかつ、輸出の半分以上を占めるのは鉱物資源である。

原油・天然ガス収入はロシア政府の歳入の約4割を占め、「1日11億ドル」とも言われる。ロシアにとって最大の輸出相手国は中国だが、地域別ではEUが最大となる。西側諸国がこぞって「もうロシアから石油やガスを買わない」という決断ができるなら、これは確実に効くだろう。

ただし「今すぐに」というわけにはいかない。そうでなくても、EU経済は「脱炭素」に向けてエネルギー政策の舵を切りつつある。ロシア産のガスが入ってこなくなったら、その分は石炭を使うか、原子力発電の稼働期間を延長しなければならない。なおかつ各国のエネルギー依存度もバラつきがある。EUは「脱炭素」の前に「脱ロシア」を目指さねばならず、なおかつその前に目の前の化石燃料の手配を急がなければならない。

アメリカのジョー・バイデン大統領は、「アメリカは欧州にLNGを供給しまっせ」と調子のいいことを言っている。しかるにアメリカの液化能力はすでに100%が使用されていて、追加のLNGを生産するインフラの余裕がない。しかも冷凍して船で運んでくるLNGは、パイプラインで送られてくるロシア産のガスとは段違いにコストが高い。さらに東欧には、ハンガリーのようなロシア寄りの国もある。「脱ロシア」は口で言うほど簡単なことではないのである。

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