認めたくないことだが、実はG7のほうがエネルギー禁輸には弱いのではないだろうか。何しろ欧米経済は40年ぶりのインフレの真っ最中。そして民主主義国には選挙がある。4月末のフランス大統領選挙決選投票、5月には豪州総選挙、さらに11月にはアメリカ中間選挙も控えている。その都度、ヒヤヒヤしなければならない。
逆にロシア側は、食糧とエネルギーを完全に自給できるうえに、国民は「我慢」に慣れている。情報統制も行き届いているから、国民は「自分たちは西側の不当な圧力を受けている」と信じている。プーチン大統領の支持率も相変わらず高い。長期戦になった場合、本当に不利なのはどっちのほうなのか。
日本も「石炭輸入停止」で建設価格などが上昇へ
4月8日には岸田文雄首相も記者会見を行い、G7共同声明を踏まえて追加制裁のリストを発表した。目玉となったのは「ロシア産石炭の段階的輸入禁止」。昨年の日本の対ロ石炭輸入額は約2800億円で、全体で約1.5兆円の対ロ輸入額の中でもそこそこ大きい。それでもG7の一員としては、そのくらいやらないとカッコがつかない。
ロシア産石炭は、わが国輸入量の11%程度を占めている。電力や高炉といった大口の需要家は、豪州(66%)やインドネシア(12%)から大型船で石炭を買ってくる。
ところがセメント会社などの小口需要家は、船が小さいからなるべく近隣国から買っている。そこでロシア炭の輸入を止めると、セメント会社はより遠くの国から石炭を調達することになり、船賃のコストが原価に上乗せされる。結果としてセメント価格が上昇して、建設や工事価格などに跳ね返ることになる。こんな風に玉突き式に影響が広がるのが、経済制裁における「返り血」の典型的なパターンと言えよう。
それでは、民間企業のロシア市場からの退出状況はどうだろう。最近、話題になっているのは、イェール大学経営大学院が公表している企業リストである。企業の社会的責任を研究テーマとしているジェフリー・ゾンネンフェルド教授が、グローバル企業のロシアからの撤退状況を採点しているものだ。4月14日時点では、「600社以上がロシアから撤退。しかし残る企業も」と題して、以下の通りに分類されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら