岸田首相に教えたい「労働者の賃金を上げる方法」 物価高でも今の日本には円高より円安がいい

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さて、本稿の主題は「賃金」だ。大風呂敷な議論に少々付き合ってほしい。図1は、筆者が考える「日本株式会社」の付加価値配分の概念的な構造だ。

(図1)「日本株式会社」の付加価値配分構造

本経済(≒典型的な日本企業)は、付加価値を、「株主還元」、「税金」、「経営者の報酬」、「正社員の人件費」、「非正規労働者の人件費」などに配分している。

報酬が上がりにくい「正社員」層

企業単位で配分を決める主体は主に経営者だが、経営者は、コストである人件費(正社員と非正規労働者への報酬)を抑えつつ、株主に対する利益配分を行いながら、自分の報酬をより大きく確保したい(だが、今のところ、アメリカの企業の場合ほどがめつく確保することに成功してはいない)。

岸田政権は、「賃上げ」すなわち、労働者になるべくたくさん付加価値を配分することを「期待」し「要請」しているが、企業の経営者はなるべく人件費を抑制して利益を大きくしたい。

その手段は、正社員は簡単には解雇できないので(そのような労働力の商品化が不十分な制度は十分「資本主義」的ではない)、正社員の雇用の抑制と、非正規労働者の雇用拡大になる。

すると、一応は解雇されにくい「正社員」層だが、とくにその競争力的に下の層は非正規労働者との競争にさらされて報酬が上がりにくくなる。労働者層全体としても、賃金の低い「非正規」の比率が拡大すると賃金水準が上がりにくい。

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